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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-092] 保存的に治療しえた門脈気腫を伴う胃壁内気腫の1例


【背景】門脈気腫を伴う胃壁内気腫は,消化管壊死を疑う所見であり,緊急手術を検討する必要がある.今回,保存的に治療しえた門脈気腫を伴う胃壁内気腫の1例を経験したため,報告する.【症例】77歳,男性.【主訴】発熱.【既往歴】胃癌(50歳,幽門側胃切除術後),喉頭癌(74歳,喉頭部分切除術後)【現病歴】4か月前に自宅で転倒した際に頚髄損傷をきたした.他院で療養中に発熱を繰り返すため,精査目的に当院へ転院した.【所見】嚥下障害があり,経鼻胃管栄養をされていた.両側肺野に軽度の水泡音を聴取.腹部は平坦軟,圧痛なし.CTで活動性の肺炎像なし.偶発的に胃壁内気腫および門脈気腫を認めた.【経過】熱源は不顕性誤嚥と考え,細菌感染を示唆する所見は乏しかったため,抗菌薬を使用せずに経過観察とした.胃壁内気腫と門脈気腫に関しては,胃管による粘膜障害の可能性を考慮して,胃管を抜去した.穿孔や壊死の可能性を考慮したが,腹部症状や腹腔内のfree air,胃壁の造影不良域などを認めず,絶食と制酸薬治療で保存的に経過観察とした.その後順調に経過し,入院第6病日のCTでは胃壁内気腫,門脈気腫ともに消失していた.同日施行した上部消化管内視鏡検査では,高度な逆流性食道炎がみられたものの,胃粘膜には潰瘍や壊死を疑う所見はなかった.【考察】消化管壁内気腫の発生部位は小腸と大腸が大半を占め,胃はまれである.消化管壁内気腫は消化管壊死を示唆する所見とされ,慎重な対応を必要とする.門脈気腫を合併した場合はさらに高い死亡率が報告されている.一方,保存的加療で軽快したという報告も複数みられる.胃壁内気腫にも予後良好なものと不良なものがあり,その成因により経過が大きく異なる.本症例での胃壁内気腫の原因は,胃管での経管栄養が原因と考える.軽微な損傷が原因と思われ,症状が軽微で偶発的に発見されるようなものは,まずは保存的に経過観察することが許容されると思われる.【結語】胃壁内気腫は,原因の診断と各原因に応じた治療法の選択が重要である.

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