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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-128] SARS-CoV2 mRNAワクチン接種後早期に発症した亜急性甲状腺炎の一例


【症例】32歳、女性
【主訴】発熱,前頚部痛,動悸
【既往歴】橋本病
【現病歴】来院10日前にSARS-CoV2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)を初回接種した翌日に局所症状を伴わない微熱が出現し, 接種2日後に38.5℃までの高熱, 前頚部痛, 動悸を自覚した. 近医にて頸部化膿性リンパ節炎疑いとして抗生剤を処方されたが改善せず, 当院受診となった.先行感染症状や最近のsick contactは認めない.
【身体所見】体温36.7℃,血圧107/70mmHg,脈拍140回/分,呼吸数20回/分,SpO2 99%(室内気), 甲状腺両葉に限局する圧痛を認めた. 頸部リンパ節腫脹なし.
【検査所見】血清TSH < 0.020μIU/ml, FT4 3.63ng/dl, CRP 2.32mg/dl, ESR 44mm/hと甲状腺機能亢進と炎症反応増多を呈した. 頸部超音波にて軽度の甲状腺腫大と圧痛部位に一致した不均一な低エコー域を認めた. 心電図は洞性頻脈以外に異常所見なく, 胸部レントゲンで心拡大や肺うっ血像は認めなかった.
【経過】COVID-19ワクチンに関連した亜急性甲状腺炎(SAT)と診断し, アセトアミノフェンとプロプラノロールによる保存加療を開始した. 初診後2週間で症状消失し, 12週間時点で甲状腺機能の正常化を確認した.  追加提出したTRAbは陰性, 抗Tg抗体陽性,抗TPO抗体陰性であった.
【考察】SATはウイルス感染に続発する場合が多いが, 最近になりmRNAワクチン接種後の症例が報告されている. 接種後2-8週間の発症が多く本例のように接種直後の発症は稀である. 本例同様の橋本病を家族歴に有する同胞内で複数発生したmRNAワクチン後SATの報告があり, 遺伝的素因が発症リスクとなる可能性がある. SARS-CoV-2スパイクタンパク質と甲状腺細胞の分子模倣による交差反応仮説が提唱されており, ワクチン接種後24-48時間でスパイクタンパク質産生がピークに達する知見を考慮すると, 本例では何らかの遺伝的素因を背景に接種直後に免疫反応としてSATを発症した可能性がある. 
【結語】ワクチン接種後の発熱・倦怠感・頭痛は非特異的だが, 頸部圧痛や頻脈などはSATを想起させる所見となり得るためバイタルサインや身体所見の確認が重要である。今後COVID-19に対するワクチン接種は継続的に行われていく可能性が高く, SATを含む免疫反応を念頭に置いておく必要がある.

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