[P-096] 骨化頭血腫の小児2例
【背景】分娩時に骨膜が頭蓋骨から剝離し,その間隙に血腫が生じる頭血腫の多くは,生後1週間から自然に吸収され3カ月までに消失する.しかし,1.5%の頻度で残存し,頭蓋骨が二重化するように骨化することがある.骨化した頭血腫はしだいに吸収されることが多いとされているが,実際の症例報告は少ないので報告する.
【症例1】月齢1の男児
[主訴] 左頭頂部の骨の変形
[病歴] 正常経腟分娩での出生直後から認められていた左頭頂部の頭血腫が,生後1か月頃に硬くなったため受診した.
[所見] 頭部CTでは二層の骨に囲まれた内部が低吸収域の腫瘤像,頭部MRIでは内部がT1強調像でやや低信号,T2強調像で高信号の腫瘤像を認めた.
[経過] その後の定期的な観察で明らかに左頭頂部の膨隆が改善しており,石灰化した頭血腫が徐々に吸収されたと考えられた.
【症例2】日齢25の男児
[主訴] 頭蓋骨断端の触知
[病歴] 正常経腟分娩での出生時から右頭頂部の頭血腫が認められ,頭蓋骨断端の触知を主訴に来院した.画像検査で骨化頭血腫と診断された.
[所見] 頭部CTでは二層の骨に囲まれた内部がやや高吸収域の腫瘤像,頭部MRIでは内部がT1強調像でやや低信号,T2強調像で高信号の腫瘤像を認めた.
[経過] 経過観察中の月齢9において頭部外傷を機に受診し,頭部CT・MRI検査で急性硬膜下血腫を認めたものの,骨化頭血腫は消失していることが確認された.
【考察】頭血腫の治療法については文献上議論がある.非石灰化頭血腫は経過観察されることが多い一方,早期の穿刺吸引による骨化予防を推奨する文献もある.骨化頭血腫に対しては,著しい頭蓋変形や二次的な頭蓋合併症を認める場合は外科的治療を要する.しかし,今回経験した症例のように自然に吸収されて縮小・消失するものは外科的治療を要さない.
【結語】骨化頭血腫の治療法に関して,何らかの外科的治療を行った既報が多い.しかし,自然に吸収される可能性があり,侵襲のある外科的処置が必要かどうかは慎重に判断する必要がある.