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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-119] 日本紅斑熱にMSSA菌血症が合併した一例


【症例】生来健康な68歳女性【主訴】発熱,皮疹,体動困難【現病歴】1週間前に食思不振,肉眼的血尿を認め,さらに発熱,頭痛,頸部痛,腰痛が出現し体動困難となり前医へ救急搬送となった.来院時,紅斑や紫斑が全身に散在し,左膝窩に刺し口を認めた.敗血症性ショックの状態であり,意識障害も認め全身管理目的に当院へ転院搬送となった.【身体所見】手足・手掌・顔面を含む全身に米粒大〜小豆大の辺縁不整の紅斑,紫斑あり.左膝窩に刺し口あり.【検査結果】<血液検査>WBC 8400/μL (Seg+Stab 85.7%,Lympho 10.5%,Mono 3.5%,Eosino 0.2%,Bsaso 0.1%,Others 0.0%),Hb 9.1g/dL,Plt 12.5*10^4/μL,APTT 32s,PT 13.9s,D-dimer 13.7μg/mL,FDP 19.8μg/mL,赤沈 1時間値 15mm/h,CK 74U/L,AST 133U/L,ALT 95U/L,LDH 798U/L,ALP 185U/L,γ-GT 49U/L,Cre 0.35mg/dL,BUN 10mg/dL,CRP 4.55mg/dL【経過】全身性に紅斑,紫斑が散在し,左膝窩に刺し口を認め,リケッチア感染症が疑われた.痂皮のPCR検査を提出し,培養採取後,広域な抗菌薬を開始した.痂皮のPCR検査ではRickettsia japonnicaが陽性となり,日本紅斑熱の診断に至った.さらに血液培養でMSSAが検出され,MSSA菌血症が合併していることが確認された.経過で化膿性脊椎炎も合併したが抗菌薬加療で全身状態は改善し,自宅退院となった.【考察】リケッチア感染症は発熱,皮疹,刺し口を三徴とし症状は非特異的かつ多彩で,疑わなければ診断が付かない疾患である.日本紅斑熱はツツガムシ病に似るが重症化傾向を示す.治療の遅れが重症化につながるため,非流行地域であってもプライマリ・ケアに携わる医療者はその病態に精通している必要がある.なお,本症例の症状や検査所見はリケッチア感染症に典型的と思われたが,MSSA菌血症の合併も判明した.混合感染の報告は少ないが,本症例は刺し口以外にentryになりそうな皮膚病変はなかった.高齢者では特に単一の疾患ではない可能性も念頭に診療にあたることの必要性を感じた一例でもあった.【結語】日本紅斑熱にMSSA菌血症が合併した一例を経験した.

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