[P-098] 突然発症の頚部痛と左下肢脱力感で救急外来を受診し、後日頚椎硬膜外血腫と診断された1例
【背景】頚椎硬膜外血腫は臨床症状として出血部位の急性の疼痛と四肢への放散痛を特徴とする稀な疾患である。血腫の大きさに応じて神経圧迫部位に合致した神経症状を呈する場合がある。頚部痛と左下肢脱力感で救急外来を受診し,撮影されたCTから後日頚椎硬膜外血腫と診断された1例を経験したので報告する.
【症例】73歳女性
【主訴】頚部痛・左下肢脱力感
【既往歴】 糖尿病、高血圧症、子宮体癌、腰椎椎間板ヘルニア(5カ月前に手術) 、頚椎症性神経根症(ペインクリニックで内服加療中)
【病歴】第1病日朝7時頃.入浴後に突然普段よりも強い頚部痛を自覚した。9時半頃歩行時に周囲からふらつきを指摘され自身でも歩行時に左下肢の脱力感を自覚した。症状は改善せず持続するため15時頃当院救急外来を受診した.
【所見】意識清明、血圧151/71mmHg、脈拍67/分・整、項部硬直あり、頚部に自発痛あり、腸腰筋でMMT4/5、立位可能だが歩行不可能、ロンベルグ試験で姿勢維持困難。頭部MRI・MRA検査で新規脳梗塞を疑う所見なし。体幹部単純CTで頚椎右背側に高吸収域を認める。
【経過】 救急医・内科医・整形外科医の診察がなされたが緊急性に乏しいと判断され帰宅となった。第2病日内科外来紹介となり頚部痛・左下肢脱力感は軽快傾向であったが、放射線科医師より第1病日のCT検査で頚椎硬膜外血腫を疑う所見の報告があり、頚部の安静を指示した。11月2日整形外科外来を受診し、頚椎MRI検査を施行され、CTと同部位に頚椎硬膜下血腫を指摘された。脊髄圧排はわずかで髄内に明らかな異常信号は指摘されず、頚部安静・ネックカラー着用で保存的加療を行うこととなった。その後、頚部痛・左下肢脱力感は消失した。
【考察】 頚椎硬膜外血腫により頚部痛・左下肢脱力感を呈したと考えられた。同疾患の認識不足と慢性的な頚部痛 があったことにより診断が遅延したと思われた。
【結語】 突然発症の強い頚部痛とそれに伴う神経症状では頚椎硬膜外血腫を鑑別に挙げ、CT検査では脊柱管内病変に留意を要する。