[P-101] 悪性疾患との鑑別を要した薬剤性紅皮症に伴う皮膚病性リンパ節症の一例
【背景】皮膚病性リンパ節症(dermatopathic lymphadenopathy:DPL)は皮膚疾患に続発するリンパ節の反応性病変の一つであるが,炎症性リンパ節腫大や悪性疾患のリンパ節転移と類似した病態をとることがある.【症例】78歳男性【主訴】全身の浮腫,色素沈着【病歴】認知症のため精神科に入院していた.X-10日頃から全身の色素沈着と著明な浮腫が出現したためX日に転院した.【所見】意識清明でバイタルサインに異常はなかった.結膜や口腔内に粘膜病変はなかった.両側腋窩・鼠径のリンパ節が腫脹していた.皮膚の掻痒感が強く,全身の皮膚に褐色調の色素沈着と多数の掻把痕を認め,背部にはびらんや潰瘍も形成していた.顔面や四肢に浮腫があった.血液生化学検査:白血球 16700/μL(好中球 90%, 好酸球 2.5%),CRP 14.99 mg/dL,IgE 4657 IU/mL.CT検査では,全身性に多数の腫大したリンパ節と両肺に多数の結節影が確認できた.【経過】薬剤性紅皮症を疑い,入院後常用薬を中止し,皮膚所見は徐々に軽快した.入院2日目に38℃の発熱があり,血液培養でStaphylococcus aureusが同定された.背部の潰瘍を感染源とした敗血症として抗菌薬の投与を行い軽快した.また同時に肺野の結節影も消失した.しかし,皮膚所見および敗血症が軽快しても多数のリンパ節腫大が遷延したことから,悪性疾患除外のためリンパ節と皮膚の生検を行い,紅皮症を原因とするDPLと診断した.薬剤中止,ステロイド外用,抗ヒスタミン薬内服により皮膚症状と浮腫は軽快したため,入院21日目に転院した.【考察】本症例では多発性のリンパ節腫大をきたしていたため,炎症性リンパ節腫大,悪性リンパ腫もしくは悪性疾患のリンパ節転移を鑑別するために生検が必要であった.また,肺病変は抗菌薬治療後に肺の結節影が消退したことから敗血症性肺塞栓症と考えられた.最終的に臨床経過と病理診断から、リンパ節腫大の原因は、薬剤性紅皮症に付随したDPLの診断に至った.【結語】リンパ節腫大の原因疾患は多岐にわたり,症例により悪性疾患との鑑別が必要になることもあるが,皮膚病変を伴う場合はDPLも考慮して精査を行うべきである.