[P-104] 咽頭閉塞感を呈したForestier病の1例
【背景】Forestier病は椎体前縁の異常骨化により椎体の強直・変形をきたす疾患である。今回、咽頭閉塞感を呈したForestier病の1例を経験したので報告する。
【症例】82歳女性
【主訴】咽頭閉塞感
【既往歴】脳梗塞・嚥下障害(80歳)、くも膜下出血(77歳)、高血圧症、2型糖尿病
【病歴】1年半前に脳梗塞を発症し、以降嚥下障害をきたし普段は7分粥食を摂取していた。第1病日より咽頭閉塞感、呼吸のしづらさを自覚した。症状が持続するため第2病日未明に当院救急外来を受診した。
【バイタルサイン・身体所見】SpO2 97 %(室内気)、呼吸 20/分、体温 36.8 ℃。頚部から泡立ち音聴取、呼吸音異常なし。
【検査所見】頚部単純CT検査で食道・気管支に明らかな占拠性病変を認めず、頚椎のアライメント不整・骨棘形成が著明で骨棘により食道は圧排されている。
【経過】救急受診時にはCT検査で食道・気道病変が明らかでなかったことから既知の嚥下障害による症状を考慮された。近医耳鼻科受診を指示され帰宅の方針となった。しかし、放射線科医にてCT所見で頚椎椎体前方の骨棘増生による食道圧排を指摘され、第5病日に当院耳鼻科および整形外科に紹介された。耳鼻科で喉頭内視鏡検査を施行され、食道入口部は軽度狭小、喉頭から声帯にかけて軽度腫張が指摘され、Forestier病を背景に感冒を罹患したものと判断された。整形外科では手術も検討されたが、その後数日で咽頭閉塞感は自然軽快し、本人希望もありこの時点での手術は見送られた。以降、現在まで症状再燃はない。
【考察】Forestier病は頭部の強直が主症状だが無症状で経過する例が多い。一方で、咽喉頭異常感、嚥下障害、誤嚥、呼吸障害、嗄声をきたした症例が報告されている。本症例は骨増殖部による食道圧排に加えて、陳旧性脳梗塞・嚥下障害が併存しており、さらに感冒に罹患したことで咽頭閉塞感を自覚しやすくなったと考えられる。
【結語】咽頭閉塞感の訴えがある症例ではForestier病も鑑別疾患として念頭におき、単純X線・CT検査では脊椎前縁の骨化の有無に留意する必要がある。