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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-107] 画像所見から早期診断した胆嚢捻転症


【背景】
胆嚢捻転症は広く知れ渡った疾患ではあるものの、有病率は低く、直接診断する機会が少ない疾患である。本症例では腹痛を契機に胆嚢捻転症を診断し、早期の治療介入した症例について報告する。
【症例】
90歳 女性 
【主訴】
心窩部痛・嘔吐
【病歴】
救急外来受診日3日前から背部痛と心窩部痛を自覚。その後右下腹部痛に変化し、嘔気も出現した。救急外来受診日前日に嘔吐を認め前医受診。下剤を処方されたものの、症状が悪化したため救急外来受診した。
【所見】
バイタルサイン:意識 GCS E4V4M6、呼吸回数 16回/分、血圧 146/89mmHg、脈拍 88回/分、SpO2 96%(大気圧)、体温 38.0度
身体所見:腹部は平坦、軟であり、筋性防御や反跳痛は認めなかった。右下腹部を最強点とする腹部全体の圧痛を認めた。
血液検査:WBC 9220/μL、総ビリルビン 1.6mg/dL、間接ビリルビン 1.4mg/dL、ALP 162U/L、γ-GTP 34U/L、AST 55U/L、ALT 29U/L、CRP 1.65mg/dL
画像検査所見(腹部造影CT):心窩部に粗大な嚢胞構造を認め、他に胆嚢に相当する所見を認めず、正常胆嚢が同定できないため、腫大した胆嚢と考えられた。病変の右側は濃度上昇構造と壁肥厚を認めた。遊走胆嚢に発症した壊死性胆嚢炎と診断した。
【経過】
救急外来受診日同日緊急胆嚢摘出術を開腹術で実施した。病理組織診断ではうっ血や壊死を認め、捻転による虚血性変化と矛盾しない所見を認めた。
術後第1病日から飲水開始し、第3病日から食事摂取開始。その後症状の悪化や、創部の異常所見の出現を認めず、第8病日自宅退院。退院約2週間後に外来再診し、経過良好。有事再診とした。
【考察】
胆嚢捻転症を胆嚢炎と診断し、保存加療すると致命的になりうる。エコーや単純・造影CTで術前の正確な診断率向上が重要である。
【結語】
高齢女性の腹痛の鑑別の一つに、胆嚢捻転症を挙げるべきである。だが、有病率が低く、出会う可能性が低い疾患であることも事実である。胆嚢捻転症を疑うべき身体的特徴や、画像所見を意識し診療に当たることが重要である。

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