[P-108] 左鎖骨下静脈血栓症を合併した高齢進行胃癌の1例
【背景】左鎖骨下動脈血栓症は片側上肢の浮腫をきたす稀な深部静脈血栓症である。高齢女性の進行胃癌に併発した左鎖骨下静脈血栓症の診断に至った一例を報告する。【症例】77歳女性【主訴】呼吸苦【既往歴】レビー小体型認知症【現病歴】X日、ショートステイ先にて夕食後、息苦しそうにしているところを職員が発見し、SpO276%のため当院に救急搬送され、即日当科入院となった。【身体所見】脈拍94回/分・整、血圧106/68㎜Hg、体温37.2℃、呼吸数39回/分、SpO293%(2L)、右肺一部wheezeあり、心音に異常なし、胸壁は左上胸部へ静脈拡張あり、腹部に異常なし。左上下肢自動運動なし、左上肢浮腫著明、左下肢浮腫あり、その他異常なし【検査所見】AST62U/L、ALT19U/L、ALP1049U/L、LD521U/L、γ―GTP868U/L、CRP12.92mg/dL、WBC11900/μL(Neut90.7%)、RBC323万/μL、Hb8.1g/dL、MCV84.5fl、Dダイマー23.3μg/mL、CEA212.3ng/mL、CA19-9113995.9U/mL。造影CTで進行胃癌、多発肝転移、多発肺転移、多発性頸椎胸椎骨転移による脊髄圧迫による左上下肢麻痺、肺血栓塞栓症、左鎖骨下から頸静脈の深部静脈血栓症を認めた。頭部CTは異常なし。【経過】画像所見から胃癌の多発転移、肺動脈血栓症、左鎖骨下静脈血栓症にて予後不良と判断した。頭部MRI、下肢血管エコーは実施しなかった。悪性腫瘍の影響に伴い、左鎖骨下血栓症を生じ、肺血栓症を合併したと考えられた。緩和ケアを行い、X+21日後、他院緩和ケア科に転院となった。【考察】本症例は鎖骨下静脈血栓症に伴い、側副血行路を生じ、左胸壁の血管拡張を起こしたと考えられた。一側上肢の腫脹と同側の胸壁血管拡張は鎖骨下静脈血栓症を疑う所見である。【結語】片側の上肢の腫脹と血管拡張は鎖骨下静脈血栓症を疑うべきである。