[P-109] ゴリムマブ関連リンパ増殖性疾患を発症した関節リウマチの1例
【背景】メトトレキサート(MTX)投与中に発症するEBER陽性率が高いMTX関連リンパ増殖性疾患(LPD)は良く知られているが,今回ゴリムマブ(GLM)関連のLPDを経験したので報告する.【症例】85歳,女性【主訴】倦怠感【病歴】75歳時に前医で関節リウマチ(RA)と診断され,MTX 4mg/週とサラゾスルファピリジン(SASP)1000mg/日が開始された.77歳時に当院紹介となり,経過中に腎機能が低下し,SASPを中止したところeGFR が30mL/min/1.73m2以上となったためMTXのみで経過を見ていた.82歳時に再度腎機能が低下し,MTXを中止しSASP 500mg/日に変更した.83歳時にRAのコントロールが悪化し,MTX 2mg/週と共にGLM 50mg/月を開始した.84歳時に再び腎機能が低下し,MTXを中止しGLMを100mg/月に増量したが,DAS28-ESR 2.83と低疾患活動性であった.85歳時の定期受診の際にHb 7.1g/dL(3か月前はHb 13.2g/dL)と貧血の進行を認めたため入院となった.体重減少や夜間発汗はなかった.【身体所見】体温37.0℃,表在リンパ節腫脹なし,発疹なし,心窩部の圧痛あり,肝脾腫触知せず【検査所見】CRP 3.19mg/dL,BUN 11.9mg/dL,Cr 1.07mg/dL,WBC 8000/µL,リンパ球数 1070,LD 149U/L,sIL-2R 1716U/mL【経過】上部消化管内視鏡検査で逆流性食道炎からの出血が認められ,PPI治療を行った.入院10日目に突然腹痛を訴え,腹部CTではリンパ節腫脹はなかったが,free airが認められ緊急開腹術を行った.小腸が穿孔しており,穿孔部位の病理所見でdiffuse large B cell lymphoma(DLBCL)が認められた.EBERは陰性であった.LPDが疑われたが高齢のため化学療法は行わず,GLMを中止し無治療で経過観察した.経過中,関節炎の悪化がありPSL 5mg/日を追加したが,術後1年経過後もDLBCLの再発は認めていない.【考察】本症例のDLBCLはGLM中止後は再発がなく,GML関連LPDと考えられる.文献的にはEBV再活性化を伴うGLM関連LPD(DLBCL)の報告が1例あるのみで,本症例もGLM単独治療によってDLBCLを発症した非常に稀な症例と考えられる.【結語】MTXだけでなくTNF阻害薬の使用中もLPDの発生に注意する必要がある.