[P-114] インスリン治療開始直後に全身浮腫をきたしたI型糖尿病の一例
【背景】インスリン開始直後に浮腫をきたした症例を経験した。【症例】40代女性。主訴)全身浮腫、息切れ。現病歴)Y-2月より視力低下を自覚、糖尿病性網膜症を指摘された。HbA1c 17%と血糖高値を指摘され、I型糖尿病の診断でインスリンアスパルトとグラルギンを開始された。1週間後全身浮腫を自覚。Z-7日、デグルデクに変更されたが改善せず、体重は30kg増加、息切れを自覚。精査加療目的に紹介受診。身体所見)身長156 cm、体重82 kg。血圧 162/98 mmHg、脈拍 91 bpm(整)、SpO2 94% (室内気)、体温36.5℃。胸部聴診上、両側下肺で呼吸音減弱。尿検査)尿蛋白陰性、血液生化学検査)Hb 10.6 g/dL, 白血球 3,300/μL, 血小板 33万/ μL, 総蛋白 5.8 g/dL、Alb 3.1 g/dL、ALT 96 U/L、γ-GTP 342 U/L、BUN 11mg/dL、Cr 0.43 mg/dL、TSH 2.93 μU/mL、BNP 71.1 pg/mL、ビタミンB1 18 ng/mL、抗GAD抗体25.9 U/mL。胸部X線)両側胸水貯留。経過)インスリン開始後から急激に生じた浮腫からインスリン浮腫を疑った。急性発症1型糖尿病の診断でインスリンを変更。また脚気心を疑いフルスルチアミンを処方したが、浮腫・胸水は増悪し、Z+6日循環器内科にて入院加療。心臓超音波検査では明らかな壁運動低下を認めず。トルバプタンの開始後浮腫は急速に改善した。【考察】インスリン浮腫は、主として顕著な高血糖を呈する新規発症I型糖尿病へのインスリン導入時に生じる病態とされ、胸水を伴う全身浮腫の症例も報告されている。機序として、インスリンによるNa排泄の低下と水貯留、毛細血管の透過性亢進などが推定されている。本症例では、他疾患が除外されたことと、著明な高血糖に対するインスリン導入時に浮腫を生じた臨床像からインスリン浮腫が疑われた。【結語】糖尿病患者に合併した浮腫において、インスリン浮腫は鑑別にあがる病態と考えられた。