[P-125] 一過性の結節性紅斑を契機に診断された高安動脈炎の一例
【症例】21歳女性【主訴】持続する下腿紅斑・皮下硬結,CRP高値【現病歴】X-1年12月に下腿に一部消退しない紅斑が出現し,X年4月には紅斑部に有痛性の硬結も伴うようになったため,同月前医皮膚科を受診し生検で結節性紅斑と診断された.NSAIDsを一時的に内服するも皮疹は改善に乏しく,CRP 6 mg/dL台が持続した.また,6月に吸気時に増悪する右前胸部痛が出現し,近医で胸膜炎と診断され2日で自然軽快した.同月当院皮膚科へ紹介され,再生検でも同様の所見でありCRP値も不変のため,精査目的に7月当科へ紹介された.【既往歴】小児喘息,COVID-19(X年5月上旬)【システムレビュー】発熱・倦怠感・食欲低下・体重減少いずれもなし.【当科初診時身体所見】体温 36.2 ℃,他バイタルサインに異常なし.胸部聴診異常なし.両側下腿にfast pitting edemaあり.右下腿前面に隆起のない1cm大と5cm大の有痛性紅斑あり.【経過】当科初診時もCRP 6.10 mg/dL,ESR 91 mm/hrと炎症所見は不変であり,結節性紅斑の原疾患は血液・尿検査では特定できなかった.7月には皮疹は改善したが,8月の血液検査では炎症所見は不変であった.当初患者の同意が得られなかった造影CT検査で上行~胸部下行大動脈,両側総頸動脈にかけて血管壁の肥厚を認め,高安動脈炎と診断した.X年10月リウマチ科に転科しPSL 40mg/日を内服開始後,速やかに炎症所見は改善した.【考察】海外の報告では高安動脈炎患者の13%に結節性紅斑を認め,また本邦における高安動脈炎の診断基準にも症状の一つとして結節性紅斑が挙げられている.本症例では結節性紅斑を含めすべての症状が消失した後も血液検査上で炎症所見が持続していたことから,炎症の原因特定のために造影CT検査を行い高安動脈炎を診断し,重篤な合併症が生じないうちに治療に結びつけることができた.また,右前胸部痛の病歴は高安動脈炎の一症状であった可能性が考えられた.【結語】結節性紅斑のエピソードがあり原因を特定できない炎症所見を認める場合には高安動脈炎を鑑別疾患に挙げる必要性を再認識した.