[P-115] 新規に呼吸不全を認めた肝硬変患者に対し,心臓超音波検査から門脈肺高血圧症の診断にたどり着いた1例
【症例提示】79歳,女性.糖尿病,高血圧,非アルコール性脂肪性肝炎,肝硬変のため当院消化器内科に通院中であったが,左大腿骨転子部骨折のため整形外科で手術後,臥床時にSpO2の低下を認めることが判明し,総合診療科に紹介された.胸部画像検査で明らかな呼吸器病変は認めず,肺動脈下肢静脈CT検査で肺血栓塞栓や下肢深部静脈血栓は認めなかった.心臓超音波検査でTRPG 43mmHg,収縮期PAP 46mmHgであり軽度の肺高血圧所見が認められたため,門脈肺高血圧症による呼吸不全を疑った.専門医療機関へ紹介したところ,右心カテーテル検査と肝静脈カテーテル検査を施行され,平均PAP 36mmHg,PVR 4.615 WU,肝静脈楔入圧(WHVP)20mmHg,肝静脈圧(HVP)9mmHg,肝静脈圧格差(HVPG)11mmHgであり,肺高血圧症と門脈圧亢進症をともに認める所見であった.肺換気血流シンチ検査では異常は認めなかった.以上の検査所見から,門脈肺高血圧症と診断された.【考察】門脈圧亢進症の肝外の随伴症状として門脈肺高血圧症(PoPH)の存在が知られているが,本邦におけるPoPH合併肝硬変症例の疫学的な報告は少なく,肝硬変患者における実診療でのスクリーニングは不十分であるとされる.肝硬変患者に立位で増悪する呼吸不全を認める肝肺症候群が有名であるが,PoPHではそのような特徴がないことから肝硬変に関連した呼吸不全であることが認識されがたい.本例では呼吸不全の原因が不明であったため,心臓超音波検査を行って肺高血圧症が疑われたところから,PoPHの診断にたどり着いた.肝硬変患者に原因不明の呼吸不全を認めた場合,心臓超音波検査で肺高血圧症を示唆する所見がないかどうかを調べてみることが,PoPHを見逃さないために必要であると考えた.