[P-116] 不明熱で発症し、軽微な足趾先端壊死部の生検で診断に至ったリウマチ性血管炎の1例
【背景】リウマチ性血管炎(RV)は皮膚症状の最も頻度が高く,RV患者の75%から89%に認められる.一般的な血管炎の皮膚所見は潰瘍形成や軽度の腫瘤を触れることが多い.今回軽度の足趾部の壊死部からRVの診断に至ったためその1例を報告する.【症例】72歳女性【主訴】発熱,呼吸苦【病歴】関節リウマチ(RA)(プレドニゾロン 7 mg/日),統合失調症,甲状腺機能低下,半年前に水中毒を発症し,以後ほぼ寝たきり状態.【現病歴】2ヶ月前から37℃台の発熱が持続していた.同時期から下腿浮腫も出現し,徐々に増悪した.3週間前に他院で右足趾の皮膚色変化を指摘され,同時期から38℃台の発熱が頻回となり,浮腫は上肢にまで及んだ.食指不振も出現し,当院紹介入院となった.【身体所見】JCSⅠ-1,血圧 122/59mmHg,脈拍 100 /分,呼吸数 28 /分,SpO2 100%(O2 2L) ,体温 38.5℃,呼吸音 両側下肺野でやや減弱,腹部膨満・軟,腸蠕動音亢進,腹部全体に圧痛あり,背部浮腫著明,両上肢・両側下腿に圧痕性浮腫著明,両足背動脈を触知,右第2-3足趾は暗紫色,関節変形著明【血液検査】WBC 17.24 103/µL,RBC 1.80 106/µL,Hgb 5.5 g/dL,PLT 385 103/µL,CRP 11.27 mg/dL,TP 5.1 g/dL,Alb 1.1 g/dL,Cre 0.48 mg/dL,RF 224.00 IU/mL,PR3-ANCA 1.0 U/mL,MPO-ANCA 1.0 U/mL,抗CCP抗体 24.7,可溶性IL2R 5281 U/mL,CH50 14.0 /mL,血沈1H 69 mm【画像検査】腹部骨盤部CT:両側胸水,腹水が貯留.皮下浮腫や腸管浮腫あり.【経過】補体低下がありRAの病勢は強いと考えられた.血管炎が疑われ,入院7日後に足趾の壊死部分で皮膚生検を施行し,白血球破砕性血管炎が認められRVと診断した.プレドニゾロン 20 mg/日で開始したところ改善した.【考察】RVの皮膚病変としては比較的大きな潰瘍や紫斑を認めることが多い.本症例では軽微な足趾先端部の壊死病変であり,血管炎と認識されていなかった.しかしながら,長期のRAの既往があり,補体低下,リウマトイド因子強陽性を認めたため,RVを疑い皮膚生検を施行し,診断に至った.【結語】RA患者で発熱,補体低下を伴う場合には,軽微な皮膚所見でも生検を考慮する必要がある.