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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-127] 周術期にドパミンD2受容体拮抗薬の併用投与により錐体外路症状を呈した1例


【背景】術後の悪心・嘔吐はオピオイド投与による合併症として頻度が高く、その予防のためドロペリドールを投与することは一般的に広く行われている。ドロペリドールは延髄第四脳室にあるドパミンD2受容体に拮抗して制吐作用を発揮するドパミンD2受容体拮抗薬である。一方で、尾状核や側坐核にあるドパミンD2受容体も拮抗するため、およそ0.2%程度の患者で錐体外路症状を引き起こすとされる。今回、我々は周術期にドパミンD2受容体拮抗薬の併用投与により錐体外路症状を呈した1例を経験したので報告する。【症例】38歳男性【病歴】右肘のデグロービング損傷に対する術後に、四肢の硬直、閉口障害、嚥下障害、構音障害を認め、精査加療目的に当院へ転院となった。【経過】前医で外傷の術後せん妄および疼痛に対し、オピオイドとドロペリドールを併用して投与していた。同じD2受容体拮抗薬のハロペリドールおよびリスペリドンを併用したことでパーキンソニズムやジスキネジアを生じたものの、D2受容体拮抗薬の副作用である錐体外路症状と気づかずに投与を継続した結果、嚥下障害から誤嚥性肺炎をきたし呼吸不全を呈した。【考察】【結語】一般に若年者はD2受容体拮抗薬による感受性が高く、錐体外路症状が成人と比較して生じやすいとされている。しかし、本症例では成人男性に対する一般的な投与量であったにもかかわらず錐体外路症状が生じたため、当初は破傷風による神経症状と疑われ、破傷風に対する検査および治療が行われた。錐体外路症状を生じうる薬剤を複数使用していることを念頭に置くことで、初期症状に早期に気づき、適切な診断や治療を行うことが可能となる。

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