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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-117] 高度の亀背、脊柱側弯症により広範な静脈血栓と多量腹水を来した1例


【症例】60歳代、女性
【主訴】腹部膨満
【病歴】X-10年頃から亀背が目立つようになっていた。X-5年に左下腿難治性潰瘍に対して前医血管外科にて左大伏在静脈血管内焼灼術を施行された。下腿潰瘍の改善に乏しく、左腸骨静脈が右腸骨静脈に圧排されている所見を認めたため、X-4年に左腸骨静脈ステント留置術を施行された。その後ステントの変形を認めバルーン拡張術を数回施行された。X年6月の下肢静脈エコーでは腸骨静脈ステント内径の狭小化や左腸骨静脈壁在血栓が認められたがステント内の閉塞は認めなかった。同時期よりエコーで多量の腹水貯留を認めるようになり、胸部~下肢造影CTや上下部消化管内視鏡検査を施行されたが腹水の原因は不明であった。利尿薬の内服を開始されたが腹水は残存したため、精査目的に当科紹介となった。
【身体所見】体温 37.1度、下腹部は軽度膨満、左下腿潰瘍あり。【検査結果】頸部~骨盤部造影CTにて腎静脈分岐部以下の下大静脈~両下肢静脈の増強不良、左腎静脈より求肝性の側副血行路の発達、胃静脈瘤、大量の腹水貯留と脊椎の亀背、側弯を認めた。
【経過】CT所見から高度の亀背、脊柱側弯により下大静脈のうっ滞を来し、下大静脈から末梢側に広範な血栓形成が起こったことで多量腹水を生じたと考えられた。血栓による静脈の閉塞が広範囲であったため手術介入は困難な状態であった。元々、腸骨静脈ステント留置に対してバイアスピリンを内服していたため、今後は抗凝固薬の使用を検討する方針となった。
【考察】本症例では亀背や脊柱側弯症により下大静脈以遠の静脈うっ滞が生じたことで難治性潰瘍や静脈血栓形成などの病態を来した可能性が疑われた。亀背の症例ではADLの低下、肺機能の低下などが合併症として報告されているが、静脈のうっ滞についても考慮する必要がある。脊柱弯曲による血栓形成や腹水症は稀であるため報告する。
【結語】腹水症の原因として、亀背や脊柱側弯症による静脈血栓症が疑われた。

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