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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-126] 1ヶ月間持続する呼吸器症状の後に皮膚症状が出現した抗ARS抗体および抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の一例


【背景】抗ARS抗体および抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎の報告は少ない。肺病変が先行し診断を困難にした一例を経験したため報告する。【症例】83歳、男性【主訴】乾性咳嗽【病歴】1ヶ月前から乾性咳嗽が出現した。近医で気管支炎が疑われ、総合感冒薬等で治療されたが軽快しなかった。当院に紹介されCT検査で両下肺の気管支肺炎と診断された。1週間内服抗菌薬による治療が行われたが、改善に乏しく入院した。【所見】身長160.8 cm、体重63.6 kg。意識は清明。体温 36.9度、血圧165/85 mmHg、脈拍数95/分・整、呼吸回数 14回/分、SpO2 96%(RA)。乾性咳嗽と両下肺野でcoarse cracklesを聴取した。両側手掌に角化性紅斑を認めた。血液生化学検査は、WBC 8,400/μL、AST 62 IU/L、ALT 58 IU/L、LD 397 IU/L、CK 298 IU/L、CRP 8.22 mg/dL、リゾチーム 11.2 μg/mL、可溶性IL-2受容体 2,780 U/mL。CT検査では、右下肺野の浸潤影と、縦隔や腹部リンパ節の腫大を認めた。【経過】総合的に判断して、気管支肺炎、サルコイドーシス、間質性肺炎を鑑別に挙げ、精査を行った。長期経過であったものの抗菌薬の変更で肺炎像は改善傾向と判断したが、入院8日目に急激な呼吸不全を来たした。CT検査で間質性肺炎の急性増悪と診断し、ステロイド治療を開始した。後日抗ARS抗体 149 U/mL、抗MDA5抗体Index値89と判明し、皮膚筋炎と診断し、専門的治療の継続のため入院13日目に転院した。【考察】抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の多くは診断時に皮膚症状を認めることが多い。本症例は1ヶ月前から持続する呼吸器症状が皮膚症状に先行し、後方視的に検討しても初期に診断するのは困難だった。【結語】改善に乏しい呼吸器症状は、後に皮膚病変が顕在化する場合があり、日々の全身診察が重要である。

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