[P-129] コロナワクチン接種後に発症したRS3PE症候群
【症例】72歳男性
【主訴】四肢疼痛
【現病歴】X-2か月に3回目のコロナワクチンを接種した。ワクチン接種3日目から頚部や両肩に痛みが出現。次第に両上腕から前腕、手に痛みが出現してきた。X-1か月頃には左上肢全体の浮腫、両下肢の疼痛と浮腫が出現してきた。X-3週間目の段階で近医総合病院の整形外科受診した。原因不明で、NSAIDs内服と湿布の処方を2週間分受けたが、症状は改善せず。X-2日に近医整形外科を受診した。X-1日から疼痛影響で体動困難となった。X日に息子に連絡して救急要請された。
【既往歴】高血圧、右手外傷後で拘縮して知覚鈍麻あり
【身体所見】JCS0、BT37.8℃、HR97/分、RR15/分、BP177/136mmHg、SpO2 97%、頭頚部に特記所見なし、咳や痰などの気道症状なし、胸腹部に特記所見なし、四肢に著明な圧痕性浮腫や圧痛がある、四肢対称性に関節痛あり、四肢深部腱反射正常
【検査結果】WBC 7800/μL、RBC382万/μL、Hb11.8g/dL、Plt35.1万/μL、BUN13.6mg/dL、Cre0.66mg/dL、Na138mEq/L、K4.0mEq/L、Cl103mEq/L、GLU 133mg/dL、CRP 6.11 mg/dL
頚部~骨盤CT:四肢に浮腫性肥厚みられるのみ
【経過】症状や経過からSAPHO症候群や高齢発症関節リウマチの症状経過とは一致せず、PMRやRS3PE症候群が鑑別に上げられた。右手浮腫は出現していないが、他は四肢対称性に疼痛、関節痛、圧痕性浮腫を伴っていた。RS3PE症候群が最も疑われステロイド投薬を開始した。X+1日には浮腫や疼痛が軽減し、X+2日目にはほとんど症状が消失した。X-2日の近医の採血結果から抗CCP抗体、抗リウマチ因子は陰性であった。後日、膠原病科への紹介とした。
【考察】ワクチン接種後にPMRやRS3PE症候群が発症する報告例が散見されている。RS3PE症候群は四肢の疼痛や頚部から肩にかけた痛みから発症する事が多い。発熱や倦怠感などの症状を伴い、四肢対称性の圧痕性浮腫が特徴的であり、PMRと異なり、関節の強ばりは乏しい。詳細な問診と経過を確認する事で本疾患を想起し、適切な治療介入を行う必要性がある。
【結語】経過の長い疾患の場合、適切に発症経過の問診や身体診察が診断に寄与する。またワクチン接種後の副反応としてPMRやRS3PE症候群が発現する可能性があり得る。