[P-131] 髄液細胞の免疫染色で診断に至った中枢神経系原発悪性リンパ腫による髄膜癌腫症の1例
【背景】中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma;PCNSL)は脳腫瘍の2%,非ホジキンリンパ腫の4-6%を占める稀な疾患である.さらに髄膜癌腫症の合併は15-20%であり,髄膜癌腫症による神経症状のみで来院した場合に疾患想起が困難である.【症例】70歳女性【主訴】両下肢の痺れと筋力低下【既往歴】高血圧,脂質異常症【現病歴】X-30日に両側臀部と両下肢の痛みを自覚した.近医で腰椎単純MRIを施行し第2腰椎椎体の圧潰所見があったが,脊髄の圧迫所見や信号変化はなく,症状の説明は困難であった.X-17日,下肢脱力が出現し,X-13日に腰椎造影MRIで第12胸椎高位から馬尾の脊髄や神経根に造影効果を伴う播種性結節を認めた.X-10日に歩行困難となり,X日に精査目的に当科へ紹介となった.【身体所見】両下肢MMT3-4,両下肢の痛覚・振動覚低下あり,両下肢腱反射消失,Babinski反射陰性,膀胱直腸障害なし【検査所見】髄液検査:細胞数139/µL(単核球96%),蛋白420.7 mg/dL,細胞診で大型の異型リンパ球あり,PET-CT:鞍上部と馬尾にFDG集積あり,頭部造影MRI:鞍上部に造影効果のある腫瘤性病変あり【経過】腰椎造影MRIより髄膜癌腫症を疑い,髄液細胞診,PET-CT,頭部造影MRIより脳腫瘍を原発巣とする髄膜癌腫症と診断した.脳腫瘍は脳室壁に沿って進展し,比較的均一に造影され,細胞密度の高い病変のため悪性リンパ腫に特徴的な所見であった.髄液細胞の免疫染色でCD20陽性であることが判明し,PCNSLの診断で血液内科で治療開始となった.化学療法で完全寛解し, 軽介助歩行が可能となった.【考察】髄膜癌腫症の原発巣は肺癌,乳癌などの固形癌の報告が多く,造血器腫瘍は比較的稀である.本症例は脳腫瘍による神経巣症状や頭痛,嘔気などの頭蓋内圧亢進症状を認めず,原発巣としての脳腫瘍の想起が困難であった.造影MRIより髄膜癌腫症を疑い,髄液細胞の免疫染色を行うことで,PCNSLの診断をすることができ,脳腫瘍生検などの侵襲的な検査を避け,治療に繋げることができた.【結語】髄膜癌腫症に伴う下肢の神経症状が契機となり,髄液細胞の免疫染色で診断したPCNSLの1例を経験した.