[P-136] 巨赤芽球性貧血に溶血性貧血が併発した一例
【背景】巨赤芽球性貧血に溶血性貧血を合併した一例を報告する。
【症例】86歳女性
【主訴】発熱、体動困難
【病歴】X-2日から発熱、体動困難、左肩痛、回転性めまいを自覚した。
【所見】身長 150 cm、体重 48.1 kg、意識清明、KT 37.7℃、BP 168/85 mmHg、HR 105 bpm、SpO2 98%(RA)、眼瞼結膜に黄染あり腹部 臍部に圧痛あり、腹膜刺激徴候なし。
【検査結果】血液検査で大球性正色素性貧血、血小板低値、ビタミンB12低値、間接ビリルビン高値、AST高値、LD高値、ハプトグロビン低値、炎症反応高値あり。末梢血液像で過分葉好中球、涙滴赤血球、巨大血小板、Howell-Jolly小体の検出あり。破砕赤血球 陰性。直接Coombs試験 陰性。上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎あり。
【経過】発熱、炎症反応高値の原因となる感染フォーカスは不明であったが抗菌薬投与を行い経過は良好であった。大球性貧血に対してはビタミンB12投与を行った。溶血所見は徐々に改善しX+4日で消失した。その後の経過フォローで貧血の改善がみられ再発は認めなかった。
【考察】
巨赤芽球性貧血は骨髄に核と細胞質の成熟度の異なる巨赤芽球がみられる疾患でありビタミンB12や葉酸不足に伴うDNA合成障害のために発症する。通常は、溶血は伴わない。本症例はビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血と考えられたが溶血所見を合併していた。溶血性貧血は膜異常症、ヘモグロビン異常、酵素異常などの先天性の要因、自己免疫性、発作性夜間ヘモグロビン尿症、赤血球破砕症候群などの後天性の要因を誘因として生じるが、これらの原因は否定的であった。巨赤芽球性貧血と溶血性貧血の合併症例の報告は複数あり、本症例の溶血の原因としてビタミンB12欠乏が疑われた。
【結語】
溶血性貧血の原因としてビタミンB12欠乏が疑われた症例を経験した。