[P-137] 悪性リンパ腫の化学療法中に発症したHelicobacter cinaedi蜂窩織炎の一例
【背景】Helicobacter cinaedi感染症は再発率の高い難治性感染症であるが比較的稀なためその臨床的特性は未解明である。今回我々はH. cinaediによる蜂窩織炎・菌血症を経験した。【症例】89歳男性、元々悪性リンパ腫と癌性腹膜炎に対してmino CHOP療法中。【主訴】両下腿紫斑・熱感・腫脹【病歴】X年5月9日より両下腿紫斑・熱感・腫脹が出現し、近医皮膚科でCEX1000mg/dayの内服が開始された。14日にmino CHOP療法6コース目のために入院した。【所見】体温 37.4℃、両下腿に紫斑・熱感・腫脹あり、WBC 5900/μL、CRP 18.95mg/dL、他の採血結果や胸部単純写真、12誘導心電図に特記所見なし。【経過】蜂窩織炎は治癒不良であり、CTRX 1g×2の静注を開始した。5月30日には症状と炎症反応も消失したため抗菌薬終了したが、6月3日には再び両下腿熱感と38℃の発熱、高度の炎症反応が出現し、血液培養採取の上でCTRX1g×2の静注を再開した。再開後は速やかに解熱、炎症反応改善し、6月11日には抗菌薬を終了し退院とした。その後、先の血液培養からはH. cinaediが検出された。【考察】H. cinaedi感染症は、その発生率の低さと微生物学的同定が困難であったことから長い間その臨床的特徴が不明であり、抗生物質の選択に関するガイドラインは現在のところ存在しないが、ペニシリン系,セファロスポリン系には比較的耐性を示すとの報告もある。またH. cinaediは再発率が高く難治であるが、最適な治療期間は不明であり、比較的長期の治療(2~6週間)が望ましいといわれている。実際に本例も退院後から1週間程で再発し、その後も入院で18日間の抗生剤静注の後に外来で抗菌薬の内服を継続とした。【結語】H. cinaedi感染症は比較的まれであるが再発率が高く難治性であり、培養で検出された場合は感受性のある抗菌薬を長期間投与する必要がある。