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2月19日 (日)

プログラム

抄録





[P-138] 前皮神経絞扼症候群による腹痛を繰り返す50歳代女性の1例


【背景】前皮神経絞扼症候群(abdominal cutaneous nerve entrapment syndrome,以下ACNES)は腹部疝痛を繰り返すことがある疾患であり、急性腹症診療ガイドライン2015では急性腹症と紛らわしい疾患としてあげられている。【症例】50歳代、女性【主訴】右下腹部痛【病歴】3か月ほど前から右下腹部に強い痛みを感じることがあり、A病院でCTや内視鏡検査など各種検査を受けたが大腸ポリープ以外に特に異常所見は指摘されなかった。当初は草刈りや農作業などの肉体労働のあとに痛みが生じることが多かったが、最近は運転などで30分以上同じ姿勢で座っているだけでも痛みが出現するようになったため当院外来を受診した。【既往歴】開腹で帝王切開と胆嚢摘出術の手術歴あり。不安神経症により通院歴があったが最近10年以上は受診なし。【所見】vital signに異常なし。眼瞼結膜蒼白なし、眼球結膜黄染なし、上腹部正中と下腹部正中に手術瘢痕あり、腹部は平坦・軟、腸蠕動音の亢進や低下はなし、臍より4cm程下方の右腹直筋外縁部に限局した圧痛あり、Carnett徴候陽性。【経過】診察時のnumerical rating scale(NRS)は8/10であり臥床で軽快した。前医での検査結果や経過、身体所見よりACNESが疑われ診断的治療として圧痛点に1%リドカイン10mlを皮下注した。トリガーポイント注射により症状は改善したが2週間程度で再発を繰り返したため、リドカインにとともにプレドニゾロン10mgを注射したところ再発までの期間は長くなり疼痛の程度もNSRで5/10と改善した。【考察】ACNESはトリガーポイント注射のみで寛解する症例もあるが、症状の改善が一時的で増悪を繰り返す症例には手術治療も行われている。本症例では手術に対して拒否的であるため増悪時にトリガーポイント注射を行うことで支障なく日常生活を送ることができているが、パルス高周波法などの他の治療法を今後検討することも必要と考えられる。【結語】ACNESは血液検査や画像所見で異常がなく以前は診断が遅れることが多かったが、特徴的な身体所見から疑い診断的治療を行うことで苦痛を早期に軽減することが必要である。

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