2次移植として実施した膵臓移植における手術手技の工夫
◎富丸 慶人1
小林 省吾1
伊藤 壽記2
佐々木 一樹1
岩上 佳史1
山田 大作1
野田 剛広1
高橋 秀典1
土岐 祐一郎1
江口 英利1
大阪大学消化器外科1
大阪がん循環器病予防センター 2
【背景】膵臓移植は,膵臓移植後のグラフト機能廃絶後や腎移植後に実施される場合があり,このような場合,前回のグラフトの機能,配置などに配慮した術式が必要となる.今回,当科で経験した2次移植として実施した膵臓移植の手術手技の工夫について検討したので報告する.【対象・方法】2000年から2022年8月末までに当院にて実施した脳死膵臓移植症例63例のうち,2次移植として膵臓移植を実施した症例は9例(14.3%)であった.その内訳は,腎移植後に腎機能が廃絶した後の膵腎同時移植(KTx→SPK)3例(A群),膵腎同時移植後の膵単独の機能廃絶後の膵単独移植(SPK→PTx)2例(B群),腎移植後の膵単独(KTx→PTx)4例であった(C群).【結果】A群では全例において右下腹部に移植されていた腎グラフトは萎縮していた.そのためSPKの際には,腎グラフトを授動するのみで,膵グラフトをほぼ通常通り右下腹部に移植することが可能であった.うち1例では,腎グラフトの授動が困難な場合に大動脈および下大静脈とグラフト血管との吻合が必要になる可能性を考え,下腹部正中切開にて手術開始としていた.B群では2例ともに右下腹部に移植された膵グラフトは摘出された後の状態であり,膵臓移植の際には周囲の癒着剥離を要したが,通常通り膵グラフトを右下腹部に移植した.うち1例では動脈吻合直後に外腸骨動脈に動脈解離を認め,人工血管置換を行った.C群では全例において腎グラフトは左下腹部に移植されており,膵臓移植の際には,通常通り膵グラフトを右下腹部に移植可能であった.なお,A,B群では,前回の移植手術のために,レシピエントの吻合血管を十分な可動性を持って確保できない可能性を考えたが,この点は十分に癒着剥離をすることで対応可能であった.【結語】2次移植として実施した膵臓移植では,グラフトの状態を含めた前回の移植手術の状況を十分に把握した上で手術に臨む必要があると考えられた.