O-026 低酸素環境改善を目的とした新規組織内酸素濃度測定法の開発と皮下膵島移植への応用
◎三頭 啓明1
猪村 武弘2
稲垣 明子2
鈴木 翔輝1
遠藤 有希子1
片野 匠2
齋藤 竜助1
戸子台 和哲1
渡邉 君子2
亀井 尚1
海野 倫明1
後藤 昌史1,2
東北大学大学院医学系研究科消化器外科学分野1
東北大学大学院医学系研究科移植再生医学分野 2
【目的】皮下膵島移植は様々な利点を有するが移植効率が極めて低く、その要因として皮下の低酸素環境が挙げられる。しかし既報では皮下酸素濃度は他の移植部位と同等と報告されており、酸素濃度の観点から皮下での膵島生着不良を説明できず、これまで皮下酸素濃度が正確に測定されていなかった可能性が懸念される。そこで低侵襲かつ正確に生体内酸素濃度を測定可能な光学式酸素センサーを用いた新規測定法を考案し、その有用性を検証した。【方法】ラットの皮下及び腎被膜下に光学式センサーを埋め込み、従来とは異なり組織を穿刺せずに酸素濃度を測定した(新規法)。対照群として同じ測定原理の針型センサーを設置した(従来法)。新規法の妥当性を確認するため、酸素供給デバイスをラットの皮下に留置し、デバイスの酸素化条件を変化させて皮下酸素濃度測定を行った。次にデバイスを糖尿病ラットの皮下に留置して皮下膵島移植を行い、経静脈的糖負荷試験により皮下酸素濃度とグラフトの関連性を検証した。最後にデバイスを用いて既報における皮下酸素濃度をラット皮下に再現した上で皮下膵島移植を行い、酸素濃度の差異がグラフトのviabilityに与える影響を検証した。【結果】新規法では皮下酸素濃度は腎被膜下よりも有意に低値を示した(p<0.01)。従来法では両部位の測定値は同等であった。酸素供給デバイスの酸素化条件に応じて、ラットの皮下酸素濃度は有意な変化を示した(p<0.05)。皮下酸素濃度が高く保たれることで有意な耐糖能の改善が示され(p<0.01)、新規測定法の妥当性が確認された。皮下酸素濃度の上昇によりグラフトのATP/DNA比が上昇する傾向が認められた(p=0.07)。【結論】新規測定法により、ラットの皮下酸素濃度は腎被膜下よりも極めて低値である事が判明した。また本研究により、皮下低酸素環境を僅かに改善するだけでも、グラフト生着率が向上する可能性が示唆された。