O-008 すい臓移植における遮熱臓器固定器の応用 - ブタモデルでの検討

◎虎井 真司1,2  倉内 幹太1  吉本 周平1  笠松 寛央1  石川 潤1  大原 正行1  小林 英司2
株式会社SCREENホールディングス1 東京慈恵会医科大学 腎臓再生医学講座 2

 臓器移植において、血管吻合が終了し、血流が再開されるまでの2次温阻血障害は、体内温度の影響を受けやすい移植臓器においてより強く起こる。膵移植は、血流再開後の障害を受けた脆弱な膵組織からの出血による付加的なリスクが高まる。先に我々は、熱力学を応用して独自開発したエラストマー材料にて腎臓用臓器固定器「オーガンポケット」を開発し、この2次温虚血を抑制することを腎移植治療で証明した。本研究は、ブタモデルにて体内での移植操作が多く加わるすい臓移植領域において、オーガンポケットの有用性を検討した。さらに循環停止ドナーによるマージナルドナーすい臓の移植モデルでも検討した。 まず、摘出モデルによる評価を行った。膵・十二指腸グラフトを摘出後に臓器保存液にて4℃に冷保存した。グラフトにオーガンポケットを装着し、腹腔内を想定した37℃の環境下に30分間静置した。コントロールは、オーガンポケットなしで同様環境下での温度を測定した。コントロールグラフトは、約30分で26.5℃に達したが、オーガンポケットを装着したすい臓は、30分後も中心温度が平均13.7℃以下に維持できていた。さらに、循環停止したドナーから膵・十二指腸グラフトを採取し、冷保存後にオーガンポケットを装着して、すい臓全摘した他のブタに腹腔内移植を行った。2次温虚血時間は約35分であった。レシピエントは、生存し4日目に犠牲死の上、病理学的に判定した。2次温虚血を防止する臓器固定器オーガンポケットは、マージナルすい臓移植グラフトにも有用であった。

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