ヒト乳歯歯髄幹細胞を用いた膵島オルガノイドによる画期的膵島移植プロトコールの開発

◎石山 宏平1  加藤 誠2  恒川 新2  三輪 祐子1  岩﨑 研太1  神谷 英紀2  小林 孝彰1
愛知医科大学外科学講座腎移植外科1 愛知医科大学糖尿病内科 2

多くの研究者の努力によって、膵島移植は「1型糖尿病に対する次世代医療」として実現可能な治療選択肢となりつつある。しかしながら、絶対的なドナー不足を背景に、膵島分離操作に伴う膵島機能低下、移植後のグラフト血流障害など克服すべき課題が挙げられ、十分な治療成績を得るためには依然として複数回の膵島移植が必要である。我々は、膵島移植後の免疫応答のメカニズム解析と制御法の確立を目指して研究を遂行し、間葉系幹細胞(MSC)が免疫抑制に有効であることを証明してきた。MSCのなかでも、より高い機能特性を有するヒト脱落乳歯歯髄幹細胞(SHED)を用いた膵島移植プロトコールの開発に着手している。
細胞培養環境に左右されやすいMSCと違い、炎症性サイトカイン刺激下においてもSHEDはMHC class2の発現増強などの細胞変化を認めず、安定した細胞集団であることを確認した(n=6)。また、抑制性因子であるPGE2、IDO、TGF-βの産生能をELISAで確認したところ、SHEDにおいて有意な産生増強効果を認めた(n=6)。細胞増殖抑制効果についても、CD3/CD28磁気ビーズ刺激したヒトPBMCの活性化をSHEDが強力に抑制することが確認できた(P<0.01, n=6)。また、この効果はサイトカイン刺激した活性化SHEDを用いることで増強され、PD1-PDL1経路が部分的に関与していることも確認できた。更に、iPS由来ヒトβ細胞に対する細胞傷害活性も、活性化SHEDの同時培養によって有意に抑制できた(P<0.01, n=6)。以上より、SHEDの免疫抑制効果とともに液性因子、細胞接触による抑制メカニズムの可能性を確認した。
今回、膵島を消化酵素で単一細胞レベルに分離した後にSHEDと再培養して有効な機能発現を有する膵島オルガノイド作成に成功しており、新しい膵島移植プロトコールについて報告したい。

r Clinical Engineers. All Rights Reserved.