WSP1-003 膵臓移植手術手技と術前術後管理における工夫の変遷と次世代への継承

◎田原 裕之1  福原 宗太朗1  別木 智昭1  荒田 了輔1  今岡 洸輝1  箱田 啓志1  小野 紘輔1  望月 哲矢1  Akhmet Seidakhmetov1  井出 隆太1  築山 尚史1  中野 亮介1  Doskali Marlen1  坂井 寛1  谷峰 直樹1  大平 真裕1  井手 健太郎1  田中 友加1  小林 剛1  大段 秀樹1
広島大学 消化器・移植外科1

本邦膵臓移植は全国で465例が施行されている(2020年末まで)。自施設では2008年以降、13例を経験しているに過ぎない。肝臓や腎臓移植と比べるとその数は少なく、生体移植もほぼないので摘出術を含めた膵臓移植手術を経験できる人材が限定的である。成績向上を永続的に目指すためには、手術手技や術後管理の次世代への発展と継承が求められる。
【手術手技】当施設では手術手技トレーニングとして、若手医師に腎移植レシピエント手術の執刀機会を一定期間一医師に集中して与えている。血管吻合やBench surgeryなど膵臓移植に必須な要素が定期的に学べ、手術動画を供覧し振り返るよう指導している。脳死提供臓器摘出は若手医師を交替制で帯同させ、次の執刀機会を与えられるよう順次指導している。また膵臓解剖の把握のため消化器外科膵臓手術症例も持ち回りで執刀させている。手術手技の工夫の特徴として、我々は全例門脈延長を行うこと、後腹膜アプローチで腸管吻合はRoux-en Yとしている。また静脈血栓防止のための吻合位置や腸管減圧チューブ留置についても術式の変遷を遂げており、次世代への発展のため症例を経験するたびに工夫を重ねている。
【術前術後管理】術後管理は膵臓移植実施要項内のマニュアルを基に管理を行っている。医師の働き方改革の観点からチーム医療体制を実践しており、誰がいつ診ても同じ診断治療が行えるよう工夫している。腎移植症例で活用している詳細な移植管理マニュアルとクリニカルパスを膵臓移植へ反映するよう目論んでいる。術前管理として待機期間中レシピエント候補の定期的な全身管理チェックと治療介入(心機能、神経障害、網膜症、透析条件変更など)を行い、糖尿病内科専門医との定期ミーティングと専門医ネットワーク活用による最良の1型糖尿病治療を実践し状態安定を図っている。
以上、限られた症例数と新しい医療体制に対応すべく、膵臓移植の次世代への発展と継承に尽力している。

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