O-015 保険診療下の臨床膵島移植実施にむけた当院の取り組み
◎山根 佳1
穴澤 貴行1
多田 誠一郎1
井ノ口 健太1
江本 憲央1
出羽 彩1
蘇 航1
長井 和之1
伊藤 孝司1
秦 浩一郎1
波多野 悦朗1
京都大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科1
【緒言】膵島移植が保険適応となり、1型糖尿病に対する一般的な治療選択肢として確立された。今後認知度が向上するに従い、症例数の増加が見込まれる。しかし医療者側、レシピエント側双方に解決すべき課題がある。臨床膵島移植の最新の成績と問題点を提示し、今後の発展に向けた当院の取り組みを紹介する。
【現状と問題点】2012年以降抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンによる導入免疫療法とカルシニューリン阻害薬、核酸代謝阻害薬による維持免疫療法が確立し、当院における5年グラフト生着率は80%と長期生着を示している。MAGE、Clarke score、HYPO scoreとも改善を認め、臨床成績は良好である。また膵島分離は87.5%で移植条件を達成し、良好な移植後成績に寄与していると考えられる。一方、膵島分離工程にかかる負担は以前から大きくは変化しておらず、8-10時間程度を要し実施数の増加には医療者側の負担軽減が必要と思われる。海外で報告されている膵島分離工程の一部自動化や、臓器摘出、膵島分離の互助精度は負担軽減につながる可能性がある。当科では膵島移植に関わるスタッフは他分野の臨床業務にも携わっているが、人員配置や業務内容の見直しを行い負担軽減に努めている。また膵島移植は自立支援医療(更正医療)の対象となっておらず、レシピエントの免疫抑制剤の費用が大きな負担となる。維持免疫療法は長期生着に寄与するため、これらの支援拡大の必要性について検討するべきである。
【結語】臨床膵島移植の現状を鑑みるに、膵島分離工程の効率化、膵島移植に携わる医療者、患者、双方における制度設計が必要不可欠である。これらの課題解決が膵島移植症例数の増加につながると考える。