再生医療を用いたβ細胞補填治療法に関する膵島移植とのクロストーク
◎池本 哲也1
島田 光生1
齊藤 裕1
脇 悠平1
寺奥 大貴1
和田 佑馬1
山田 眞一郎1
森根 裕二1
徳島大学病消化器・移植外科1
【背景】重症の1型糖尿病に対する膵島移植が抱える重大な問題点の1つとして、本邦における深刻なドナー不足が挙げられる。ただし、本問題点は容易に解決されうるとは言えないため、抜本的な方向転換が必要な状況と考えられる。我々はこの状況に対し、再生医療を用いた新たな細胞移植医療の樹立に向けた研究を継続的に行っており、これまでの成果につき発表する。
【方法】ヒト脂肪由来幹細胞(adipose derived stem cell: ADSC)を用いて、我々の発案したinsulin-producing cell (IPC)の2- step分化誘導法を新規3次元培養法およびxeno-antigen freeの方法へ改変し、in vitro / in vivo function assayを行った。本研究の良好な特性解析の結果を基に、新たな細胞移植戦略を意識した医師主導治験樹立を行うこととした。
【結果】我々は、これまでの基礎的研究結果を基に、「GCTP grade CPCで、局所麻酔下に採取した数gの皮下脂肪よりADSCを分離精製後、IPCに分化誘導し、腹腔鏡下に1型糖尿病患者の腸間膜内へ自家移植する」という一連の戦略を発案した。当戦略は2020年度のAMED 戦略的橋渡し研究(シーズB)に引きつづき、2022年度のAMED再生医療実用化事業に採択され、また、PMDAとの安全性および品質に関する対面助言を終了し、2021年度末に非臨床PoCを取得したことで、First-in-human試験となる医師主導治験届(Ph I/IIa)提出に向け、鋭意準備中である。
【結語】再生医療を用いた本戦略は、更に先端的技術と融合し、新たなβ細胞補充療法として確立される可能性がある。本戦略は膵島移植の経験と知見が大きなバックグラウンドとなっており、そのクロストークによってパラダイムシフトとなり得る。