WSP2-006 カナダ・アルバータ大学病院膵島移植プログラムの変遷・現況に基づいた膵島移植のさらなる進展へ向けた探索

◎金 達也1  Peter Senior1  AM James Shapiro1
アルバータ大学病院膵島移植プログラム1

 本発表ではアルバータ大学病院膵島移植プログラムの変遷・現況を紹介することにより、日本の膵島移植の進展に貢献できるかを探索したい。
 1999年の Edmonton Protocol 発表後、僅か 2年で、膵島移植は、厳格な治療によっても血糖コントロールが困難な 1型糖尿病患者に対する標準治療として、アルバータ州政府により承認された。アルバータ大学病院の臓器移植の歴史は日本のそれと比べて大差なく 1967年に初めて腎移植が施行されている。病院内各臓器別移植部の中でも膵島移植プログラムの歴史は最も浅い。我々は 1999年以降 314名の 1型糖尿病患者に 738回の膵島移植を施行してきた。2019年10月までに膵島移植が施行された 255例の移植成績を解析したところ、移植後 5年, 10年, 20年のグラフト生着率は、それぞれ 75, 58, 48%であった(Lancet Diabetes Endocrinol 2022)。プログラムが安定して活動できているのは、ドナー数の増加、州政府からの資金援助があるからに他ならない。
 医療従事者に目を向けると、日本とは異なり、ドナー・コーディネーターは全ての臓器・組織移植に包括的に携わっている。膵島移植医・糖尿病内科医が膵島移植のみに専任していないことは日本の状況と同様である。薬剤師、栄養士、社会福祉士、膵臓移植外医をも交えて毎週会議を開いている。膵島単離部門では技術員 7人が常勤し、臨時技術員と共に 24時間体制で膵島単離・移植に備えている。
 我々は標準治療としての膵島移植と並行して多くの臨床試験を実施してきた。その結果、プログラム自体が発展してきた言える。現在、5件の臨床試験を継続中で、さらに ES 細胞由来膵島細胞の経門脈的肝内移植 (第1/2相)、 CRISPR 技術を導入した ES 細胞由来膵島細胞の皮下移植 (第2相) の準備中である。州政府以外からの資金調達を伴う新規治療開発が、標準治療としての膵島移植の認知度の向上ならびに人材育成に寄与し、ひいては膵島移植のさらなる進展につながるものと考える。
 

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