O-001 Alberta Islet Distribution Program がヒト膵島を用いた日本発の基礎研究に果たしてきた役割

◎金 達也1,2  AM James Shapiro1
アルバータ大学病院膵島移植プログラム1 Alberta Islet Distribution Program 2


 アルバータ大学病院膵島移植プログラムは 2,400 例以上の膵島単離を施行してきた。膵島単離は臨床移植を第一義目的として行われるが、移植基準を満たさず、ドナー・ドナー家族から承諾の得られている場合には膵島は研究転用される。ヒト膵島を用いた基礎研究の重要性は研究者間では広く認識されており、膵島移植の発展に相まって、研究用ヒト膵島提供組織が新設されてきた。その結果、多くの研究者がヒト膵島の提供を受けられるようになった。
 我々は 2007年に Alberta Islet Distribution Program [AIDP] を設立した。膵島を提供してきた研究者は 49(カナダ 18, 米国 14, 日本 8, イスラエル 4, シンガポール 2, 英国 2, ドイツ 1)を数える。AIDP は単独組織でありながらも、米国・欧州の多施設共同組織の活動度には劣っていない。AIDP は過去 15年間で 409例のドナー膵より単離された膵島を研究転用してきた。2020年には 17例のドナー膵から単離された膵島が研究転用された結果 19の研究者が平均 24,171 IEQ の膵島を平均11.8回受け取っている。他の組織では 100 IEQ あたり 12 USドル程の研究者負担を強いている一方で、AIDP は膵島を無償で提供していることは特筆すべきである。膵島の有効利用を願う我々の奉仕精神が AIDP の活動を支えている。膵島収量が移植基準量に満たないことが、研究転用になる理由のほぼ 100% であり、低品質が理由で転用されることは皆無に近い。北米の施設には通常翌日に到着するが、流通事情のため 2日要することが稀にある。そのよう場合、ヒト膵島へのアクセス頻度が高い北米の研究者は、膵島を破棄することが珍しくない。AIDP から日本への空輸には 2日以上を要するにも拘わらず、日本の研究者は膵島を貴重に扱ってこられ、12編の日本発の研究成果を Cell Reports をはじめとする学術雑誌に発表して頂いた。
 AIDP はドナーとドナー家族の願いを叶えるため、公正な研究用膵島の提供を通して今後も医科学の進展に貢献していきたい。

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