膵臓移植前後での神経伝導速度を用いた糖尿病多発神経障害の評価について

◎平塚 いづみ1  四馬田 恵1  田中 知香1  會田 直弘2  栗原 啓2  清野 祐介1  高柳 武志1  伊藤 泰平2  剣持 敬2  鈴木 敦詞1
藤田医科大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科学1 藤田医科大学医学部移植・再生医学 2

【目的】膵臓移植を希望する1型糖尿病患者は罹病期間が長い為、腎症・網膜症のみならず神経障害も進行している事が多く、その重症化は患者のQOLと生命予後に直結する。今回我々は移植前後において神経伝導速度検査(NCS)を用いて糖尿病多発神経障害(DPN)について評価した。【対象】2013年5月~2020年2月に膵臓移植を施行した1型糖尿病患者37例。移植登録時の平均年齢41.8歳、平均罹病期間25.2年、HbA1c 7.0±1.1 %、合併症は腎症4期/5期 5/27 例、前増殖性/増殖性網膜症 9/27例。SPK/PAK 33/4 例であり、移植待機期間(中央値)は28ヶ月、移植後は全例でインスリンフリーとなった。【方法】移植前(登録時)と移植1年後にNCSを施行し、DPN重症度分類(馬場分類2013)を用いて病期分類を行い、F波潜時、運動神経/感覚神経伝導速度(MCV/SCV)について検討した。【結果】病期分類では移植前は0期(なし)2例、1期(軽度)12例、2期(中等度)11例、3期(重度)7例、4期(廃絶)5例であり、移植1年後に8例で病期の改善(1期5例→0期、2期2例→1期、3期1例→2期)を認めた。移植1年後で移植前より脛骨F波潜時は54.8±5.8→52.2±5.3 msと有意な短縮を認め、脛骨MCVは36.3±4.7→37.9±6.7 m/s、腓腹SCVは40.8±4.3→42.8±4.4 m/sと有意な改善を認めた。特に病期分類0-1期においてその傾向が顕著であった。【結語】膵臓移植はDPN進展を抑制し、軽度の障害であれば改善することが示唆され、移植後長期に渡る良好な耐糖能の維持はDPN改善の観点からも重要と考える。

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