O-024 脳死膵単独移植後1年11ヶ月で再発した1型糖尿病の一例

◎長田 梨比人1  牧 章1,2  駒込 昌彦1,2  布川 靖啓1  山田 永徳1  丸田 祥平1  小暮 亮太1  森 一洋1  二宮 理貴1  木村 暁史1  市川 将平1  新村 晶子2  櫻井 悦夫2  別宮 好文1,2
埼玉医科大学総合医療センター 肝胆膵外科・小児外科1 埼玉医科大学総合医療センター 臓器移植医療センター 2

 膵移植後の1型糖尿病再発は6-8%にみられるとされ、頻度は高くないが膵グラフトロスの原因として重要であり、常に鑑別する必要がある。今回我々は術後1年11ヶ月で1型糖尿病再発によりグラフト機能不全に陥った症例を経験した。
 症例は24歳男性。1歳時より1型糖尿病に罹患し、また慢性甲状腺炎を合併していた。16歳時に膵移植登録を行った。22歳時に登録後待機期間5年8ヶ月で、16歳男性脳死ドナーよりグラフト提供を受けた。(冷阻血時間 731分、温阻血時間48分、手術時間262分 出血量200g)移植2日後に脾静脈血栓に対する再手術を要したが、インスリン離脱を達成し、術後28日で退院した。
 外来定期フォローで経過良好であったが、全身倦怠感と600mg/dl以上の著しい高血糖を呈したことから緊急入院となった。C-peptideは0.08ng/mlと著明に低下、この時点で抗GAD抗体は308.3U/mlで陽性、抗IA-2抗体は0.6U/ml未満で陰性であった。グラフトに対して経皮的針生検を施行した。ランゲルハンス島周囲に炎症細胞浸潤をみとめたが、膵実質の線維化はみられなかった。EVG染色およびCD34に対する免疫組織化学染色では、血管壁の構造異常や血栓は認められず、またC4dは陰性であった。インスリンに対する免疫組織化学染色ではランゲルハンス島のインスリン陽性細胞は著減していた。以上の所見から、急性および慢性拒絶反応は否定的であり、膵移植後の1型糖尿病再燃と診断した。3ヶ月後には抗IA-2抗体も3.3U/mlと陽性化した。
 Mixed Meal Tolerance Test (MMTT)の結果、グルカゴンの上昇は確認されたが、C-peptideはすべて感度以下であり、グラフトのインスリン分泌能は廃絶したと判断した。再発から4ヶ月が経過し、定時インスリン投与を再開、持続血糖測定システムを導入した。免疫抑制剤は継続して経過観察中である。本症例に対して文献的考察を交えて報告する。




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