O-027 不織布構造ゼラチン基材の前留置期間が皮下膵島移植のグラフト生着へ及ぼす影響に関する検討
◎齊藤 竜助1
稲垣 明子2
中村 保宏3
猪村 武弘2
片野 匠2
鈴木 翔輝1
遠藤 有希子1
三頭 啓明1
金井 哲史1
戸子台 和哲1
亀井 尚1
海野 倫明1
渡邉 君子2
田畑 泰彦4
後藤 昌史2
東北大学医学系研究科消化器外科学1
東北大学医学系研究科移植再生医学 2
東北医科薬科大学医学部病理学 3
京都大学医生物学研究所生体材料学分野 4
【背景】皮下膵島移植は低侵襲であり種々の利点を備えているが、実用化には新生血管床の構築や細胞外マトリックス(ECM)の補填等による移植環境の至適化が必須である。我々はこれまでに、不織布構造ゼラチン基材(GHNF)の前留置により、皮下膵島移植の成績が著しく向上する事を報告してきた。
【目的】GHNFの前留置期間が皮下膵島移植の成績へ及ぼす影響を検討した。また、その機序の解析を通し、皮下膵島移植の成功要因の同定を試みた。
【方法】マウスの皮下にGHNFを前留置する期間により、2週間(2W群; n=11)、4週間(4W群; n=16)、6週間(6W群; n=15)、8週間(8W群; n=13)の4群を設定した。各群において移植7日前に糖尿病を誘導後、270 IEQsの同種同系膵島移植を行った。移植後、血糖値及び糖負荷試験によりグラフト機能を評価し、皮下組織の免疫組織化学染色、炎症性メディエーター及び膵島保護因子のタンパク・遺伝子発現解析により機序を検討した。
【結果】膵島移植後の血糖値、治癒率及び糖負荷試験は、いずれも6W群が他の群に比し有意に良好な結果を示した(p<0.01)。皮下組織における新生血管数は、膵島移植の前後いずれの時期においても6W群が他群よりも有意に高値を示し(p<0.01)、また膵島周囲被膜のECM発現率は経時的に増加、皮下のGHNF残存量は経時的に減少する傾向が見受けられた。炎症性サイトカインに関してはGHNF留置期間に応じて減少したが、8W群で再上昇する傾向が確認された。さらに遺伝子解析により、6W群においては血管新生や膵島保護に関連する21因子の発現が有意に上昇する事が判明した。
【結論】GHNFの前留置期間が皮下膵島移植の成績に影響を及ぼす事が明らかとなった。皮下移植部位における新生血管構築、ECM補填、GHNF残存量、炎症惹起レベル、膵島保護因子の放出量が皮下膵島移植成功の鍵であり、これらの複合的バランスによりGHNFの至適留置期間が決定され、6週間が最適と考えられた。