不織布構造ゼラチン基材と脂肪由来幹細胞の併用による皮下膵島移植成績の検討

◎齊藤 竜助1  稲垣 明子2  中村  保宏3  猪村 武弘2  片野 匠2  鈴木 翔輝1  遠藤 有希子1  三頭 啓明1  金井 哲史1  戸子台 和哲1  亀井 尚1  海野 倫明1  渡邉  君子2  田畑 泰彦4  後藤 昌史2
東北大学医学系研究科消化器外科学1 東北大学医学系研究科移植再生医学 2 東北医科薬科大学医学部病理学 3 京都大学医生物学研究所生体材料学分野 4

【背景】皮下膵島移植の実用化には、新生血管床の構築や細胞外マトリックス(ECM)の補填等による移植環境の至適化が必須である。我々は、不織布構造ゼラチン基材(GHNF)の前留置により、皮下膵島移植のグラフト生着が向上する事を報告してきた。今回、更なる成績向上のため、血管新生及び膵島保護作用を有する脂肪由来幹細胞(ADSC)に着目した。 
【目的】GHNFへのADSC付加が皮下膵島移植の成績に及ぼす影響を検討した。
【方法】マウスの皮下へGHNFを留置する前日に、GHNF上に1.0×106個のADSCを付加し培養した。ADSCの有無によりADSC+GHNF群(AG群; n=11)、GHNF単独群(G群、n=15)を設定した。また、対照群としてシリコンスペーサーのみを留置する群(S群; n=10)、門脈移植群(IPO群; n=10)の計4群を設定した。各群における移植前処置の期間を6週とし、移植7日前に糖尿病を誘導後、180 IEQsの同種同系膵島移植を行った。移植後、血糖値測定、糖負荷試験、皮下組織の免疫組織化学染色及び遺伝子発現解析を実施した。さらにADSCの皮下留置後の動向を観察するため、GFPマウスから分離したADSCをGHNFに付加し、前留置後1、2、6週で組織学的に評価した。
【結果】膵島移植後の血糖値推移及び糖負荷試験は、いずれもAG群が他の群に比し有意に良好な結果を示した(p<0.01)。各群の移植後60日における糖尿病治癒率は、それぞれAG群 63.6%、G群40%、S群0%、IPO群40%であった (p=0.01)。G群に比し、AG群では血管新生遺伝子の有意な上昇を認めた(p<0.05)。膵島周囲被膜のECM発現率は、群間に差異を認めなかった。また、GFP陽性ADSCは経時的に減少し、留置後6週では殆ど残存しなかった。
【結語】ADSCの付加により、皮下膵島移植におけるGHNF前留置の効果が更に高まる事が判明した。膵島移植時には既にADSCが局所に存在しないことから、その効果は直接的な膵島保護作用ではなく、移植環境の至適化に起因すると考えられた。








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