膵腎同時移植におけるサルコペニアの検討

◎會田 直弘1  伊藤 泰平1  栗原 啓1  平塚 いづみ2  四馬田 恵2  鈴木 敦詞2  長谷川 みどり3  剣持 敬1
藤田医科大学医学部移植・再生医学1 藤田医科大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科学 2 藤田医科大学医学部腎臓内科学 3

【はじめに】サルコペニアは種々の外科疾患における予後不良因子であり、耐糖能への悪影響も懸念されている。糖尿病、慢性腎不全はともにサルコペニアのリスク因子であり、膵腎同時移植レシピエントは高率にサルコペニアであることが推察される。そこで膵腎同時移植とサルコペニアとの関連について検討した。【対象と方法】対象は2012年9月より2018年末までに当院で膵腎同時移植を施行した46例(男17例、女29例)。移植直前に施行したCTの第3腰椎レベルの腸腰筋面積を身長の2乗で除し筋肉量の基準とし(PMI、cm2/m2)、Kaidoらの報告に基づき男 6.36 cm2/m2、女 3.96 cm2/m2以下をサルコペニアとした。患者背景、周術期因子、グラフト内分泌機能(1か月および1年時のグルカゴン負荷試験のΔCPR)、移植後3年の経過についてサルコペニアの有無による2群比較を行った。【結果】46例中26例 (56.5%)がサルコペニアであった。サルコペニア群は高齢であったが(41.0 [31-61] vs 46.5 [34-65]歳、p=0.002)、性差はなく糖尿病歴、透析歴、待機期間も同等であった。手術時間、出血量に差はなかったが、Clavien-Dindo分類3以上の合併症はサルコペニア群に多かった(サルコペニア群:13/26 例 [50%] vs 正常群:6/20例 [30%])。正常群は全例が2週未満でICUを退室したが、サルコペニア群では6/26例(23.1%)が2週以上の入室を要した(p=0.029)。1年及び3年患者生存率は正常群がいずれも100%であるのに対し、サルコペニア群では84.6%、80.8%と有意に低値であった(p=0.024)。1年、3年Death-censored グラフト生着率は正常群が95.0%、85.0%であり、サルコペニア群はいずれも84.6%であった(p=0.66)。サルコペニア群の1か月時、1年時のΔCPRは2.20 [0.5-17.15]、3.46 [0.79-11.56] ng/mlであり、正常群の2.66[0.6-5.68]、3.24 [1.20-6.77] ng/mlと同等であった。【結語】サルコペニアは膵腎同時移植においても予後不良因子であり、術前からの積極的な介入が望まれる。

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