O-021 当院で経験した膵腎同時移植後COVID-19感染の2症例

◎大島 稔1  安藤 恭久1  須藤 広誠1  松川 浩之1  西浦 文平1  近藤 彰宏1  浅野 栄介1  岸野 貴賢1  隈元 謙介1  岡野 圭一1
香川大学消化器外科1

COVID-19感染拡大下において移植後患者の生命を守るため、日本移植学会より治療指針が随時提言され、レジストリーが立ち上げられた。免疫抑制剤内服下での感染は重篤化のリスクが高いとされているが、膵移植後のCOVID-19感染症例は未だ多くはなく(2022年10月現在 登録 3例)、当院での経験を報告する。
【症例1】51歳女性、膵腎同時移植後7年、維持免疫抑制剤はTac(1.4mg)、MMF(1500mg)、PSL(5mg)。発熱、咳嗽を主訴に近医を受診し、COVID-19と診断された。MMFを500mg/dayに減量し、慎重な経過観察を継続した。その後、症状の改善を確認し、発症8日目以降、MMFを徐々に維持量1500mg/day まで戻した。罹患4か月後現在、うつ病を発症し、精神科受診を継続しているが、移植臓器拒絶やCOVID-19再感染は認めていない。【症例2】52歳女性、膵腎同時移植後6年、維持免疫抑制剤はTac(5mg)、MMF(500mg)、EVL(3.5mg)、PSL(5mg)。同居人の感染確認後、発熱と咳嗽が出現し近医を受診し、COVID-19と診断された。移植後であることを伝え、モルヌピラビルが処方された。以前よりCMV感染既往のためMMFを減量しEVLを併用していたため、免疫抑制剤の変更は不要と判断し、罹患4日目には解熱を確認した。移植後患者のCOVID-19感染に対してはより慎重な対応が必要であり、免疫抑制剤の減量やCOVID-19に対する経口治療薬投与を検討する必要がある。一方、膵移植レシピエントは県外患者も多く、通常のCOVID-19感染者以上に対応に苦慮するため、自宅近い医療機関との連携が重要と考えられる。

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