O-019 高度な解剖学的破格を有する脳死ドナーからの膵腎同時移植の1例

◎栗原 啓1  伊藤 泰平1  會田 直弘1  剣持 敬1
藤田医科大学移植・再生医学1

ドナーは20歳代女性で、死因は脳腫瘍で、脳死下臓器提供が予定された。臓器採取前に実施された造影CTにて以下の解剖学的破格がされた。
・大動脈左側に下大静脈(IVC)が走行。
・右肝静脈、中肝静脈は横隔膜を超えて右房へ直接流入。
・門脈は十二指腸腹側を走行。
・動脈系は肝動脈が上腸間膜動脈(SMA)から肝動脈が分岐
・グラフト膵は尾部が欠損
以上のように解剖学的破格は高度であったが、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓が提供されることとなった。 
臓器採取に際しては各臓器とも副損傷なく終えることができた。肝動脈は膵上縁、門脈は膵上縁から5mm肝側で切離されたが、門脈は通常より短くなり、ドナーの外腸骨静脈グラフトを用いた延長を必要とした。腎グラフトは、腎静脈は右側が長く、膵腎同時移植予定の患者に右腎を用いた。
レシピエントは40歳代、女性。I型糖尿病、慢性腎不全に対し、膵腎同時移植を行った。膵グラフトはhead down、静脈吻合は外腸骨静脈とグラフト門脈を端側吻合、動脈吻合はCarrel patchと外腸骨動脈を端側吻合、膵液は腸管ドレナージとした。
移植直後よりインスリン離脱、透析離脱し、術後一か月目の検査において、HbA1c 4.4%、Cr0.91mg/dlであり、OGTTは正常パターン, グルカゴン負荷試験ではΔCPR4.18と、移植後の膵機能、腎機能は非常に良好であった。
高度な解剖学的破格を有する脳死ドナーからの膵腎同時移植を経験したので報告する。

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