O-012 心停止後膵島・腎・膵臓移植における Uncontrolled donation after circulatory death の解釈
◎金 達也1
野口 洋文2
アルバータ大学病院膵島移植プログラム1
琉球大学再生医学講座 2
Maastricht 分類によると Donation after circulatory death donor [DCD] は Uncontrolled DCD [uDCD] と Controlled DCD [cDCD] に大別される。uDCD と cDCD の違いは、心停止が予期できるかどうかで区別され、呼吸器離脱の有無とは関係ない。呼吸器を離脱しても心停止までの時間は誰にも Control(=制御)できないのであり、規定時間内に心停止とならず臓器提供に至らない例は稀ではない。一部の例で呼吸器離脱がされていた日本ではその有無を区別するため Controlled/Uncontrolled setting 等と表現されてきた経緯がある。現行の典型的心停止後ドナーでは、呼吸器離脱とはしないものの、家族からの承諾、臓器の適正判定、一部の例ではへパリン投与、バルーンカテーテル挿入等が心停止前から準備され、心停止に向けて管理下におかれている(= Control されている)。
Web of Science と Google Scholar を用いて、2022年11月までに日本所属の施設から発表された心停止後膵島・腎・膵臓移植に関連した論文を検索した。uDCD/cDCD について言及されている論文は、膵島移植関連で3本 腎移植で15本 膵臓移植で2本であった。2本の腎移植論文のみで「uDCD は予期せぬ突然の心停止からのドナー」と解釈されていたが、残りの18本では「日本の DCD は(呼吸器離脱をしないので)uDCD」との解釈がなされていた。Maastricht 分類に関しては、IV型とされるドナーを主に構成された論文が最も多かったが、V型とされるドナーのみ、III型とされるドナーのみを扱っている論文もあり、施設間での Maastricht 分類の解釈の違いが浮き彫りになった。
現行の日本の心停止後ドナーは海外で言われる uDCD からは区別されるべきである。uDCD と分類しながらも心停止前からドナー管理が行われている日本の状況は、海外からは不可解にみられている。心停止後臓器提供増加のため ECMO の導入を含めた体制強化は喫緊の課題であるが、現状では国際舞台で uDCD についての議論が嚙み合わない。