O-020 当施設における膵腎同時移植の治療経験
◎見城 明1
西間木 淳1
月田 茂之1
鈴志野 聖子1
武藤 亮1
佐藤 直哉1
小船戸 康英1
芳賀 淳一郎1
石亀 輝英1
岡田 良1
木村 隆1
丸橋 繁1
福島県立医科大学医学部肝胆膵・移植外科1
【はじめに】脳死下膵腎同時移植(SPK)の治療成績は良好で、Ⅰ型糖尿病に対する根治的な治療法として確立しているが、周術期合併症発生率の低減および晩期合併症の発症予防が課題である。
【対象・方法】当施設で2001年~2021年に膵臓移植を実施したSPK 8症例(観察期間の中央値6.1年)を対象とした。レシピエント・ドナーの背景因子に加え、周術期合併症・晩期合併症について調査し、周術期および晩期合併症の改善に向けた対策を検討することを目的とした。
【結果】レシピエントは、男性6例(75%)、年齢48歳(32-54)、BMI21.4(17.3-27.3)、DM病悩期間23年(19-34)、移植前透析期間5.2年(2.6-15.1)、待機期間3.5年(1.8-7.2)であった(中央値と範囲を記載、以下も同様)。ドナーは、男性4例(50%)で年齢 46歳(18-53)、BMI 22.2(17.7-28.4) であり、マージナルドナー6例(75%)であった。膵臓の総阻血時間は644.5分(557-954)、手術時間711分(570-830)、出血量1405g(565-2130)、術後入院期間は63日(30-228)であり、周術期合併症は、CD grade II 6例、IIIb 2例(腹腔内出血1, 移植腎摘出1)、IVa 1例(腸管穿孔による腹膜炎)で手術関連死亡は経験していない。移植後晩期合併症は、心血管イベントによる患者死亡 1例(移植後7.9年)とkidney graft loss 1例(FSGS, 移植後5.3年)で、膵グラフトの1年・3年・5年生着率は100%、10年生着率は67%(death with functioning graft 1例)であった。
【考察】CD grade IIIb・IVaの要因は、腎グラフト生検部位からの後出血、primary non-function graft、開腹手術既往に伴う癒着であり、晩期合併症の要因は、糖尿病罹病期間・移植前透析期間やドナー因子(マージナルドナー)が関連していた。
【結語】
膵臓移植の成績は良好であった。さらなる成績向上のためには、周術期合併症に対する適切な対応と、糖尿病罹病期間を意識した移植後長期にわたる心血管イベントに関するスクリーニングが必要である。