O-032 脂肪由来幹細胞と膵島細胞の複合細胞シートにおける細胞間微細構造の観察

◎佐藤 直哉1  鈴志野 聖子1  芳賀 淳一郎1  石亀 輝英1  小船戸 康英1  武藤 亮1  月田 茂之1  西間木 淳1  木村 隆1  見城 明1  丸橋 繁1
福島県立医科大学 1

【目的】これまでに温度応答性培養皿を用いた膵島細胞シートを作成し、糖尿病Scidマウスの皮下移植モデルにおいて、その有効性を示した。さらに、膵島細胞に脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC: Adipose-derived Mesencymal Stem Cells)を付加することで、糖尿病マウスの血糖正常化に必要な膵島細胞数を劇的に減少(およそ5分の1)させることを報告した。その機序として、ADSCから分泌される液性因子が膵島細胞の活性維持に有効であるが、組織として再生されるADSC-膵島細胞シートでは細胞間相互ネットワークが再構築され、相互の細胞活性維持に関与していると予想される。本研究では、電子顕微鏡を用いて再生複合シートにおける細胞間接着複合体を含む微細構造を観察し、細胞間相互作ネットワーク構築について評価した。【方法】再生細胞シートの作製には温度応答性培養皿を使用した。ラットより分離した膵島細胞とマウス皮下脂肪より分離したADSCを用いて膵島細胞単独シートおよびADSC-膵島細胞複合シートを作成した。電子顕微鏡を用いADSC-膵島細胞複合シートにおける微細構造について観察し、膵島細胞シートと比較した。【結果】膵島細胞単独シートと比較して、ADSC-膵島細胞の複合細胞シートでは細胞接着複合体であるtight junctionおよびgap junctionが多く観察された。さらに、ADSC表面からは多くの微絨毛が確認され、膵島細胞と架橋する像が観察された。また複合細胞シートでは、膵島細胞同士の細胞間接着複合体も多く観察され、密な細胞間ネットワークが再構築されていることが確認された。【結語】ADSC-膵島細胞の複合細胞シートでは、ADSCにより細胞間接着が促進されることで細胞間相互ネットワークが構築されると考えられる。細胞シート工学を用いた膵島細胞シートの再生においてADSC付加の利点は、ADSCより分泌される液性因子(パラクライン)の作用のみならず細胞接着促進効果もあると考えられる。

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