O-022 膵腎移植9年後にグラフト十二指腸壊死を来したが、グラフト膵頭十二指腸切除を施行し内分泌機能を温存しえた症例

◎駒込 昌彦1  牧 章1  長田 梨比人1  別宮 好文1
埼玉医科大学総合医療センター肝胆膵外科1

【症例】42歳女性。1型糖尿病、慢性腎不全に対して9年前に他院で脳死ドナー(DQミスマッチ、抗体検査陰性)による膵腎同時移植がおこなわれている。免疫抑制はBasiliximab, Tac, MMF, steroidの4剤。14ヶ月後に膵拒絶(AMY・LIP上昇)に対してステロイドパルスがおこなわれた。37ヶ月後に挙児希望のためMMFからAZAに変更。術後25ヶ月と63ヶ月のDSAはclassⅠ,Ⅱともに陰性。68ヶ月後に転居により当院紹介。服薬コンプライアンスは良好。【経過】73ヶ月後に右下腹部痛で受診。腹膜刺激症状と炎症反応上昇を認め、CTでは右腸骨部のグラフト十二指腸の拡張と壁の浮腫を認めた。保存的に治療を開始したが翌日も症状改善なく、再度施行したCTでグラフト十二指腸の壊死・穿孔と判断し緊急開腹とした。【手術】グラフト周囲に混濁した腹水を認め、グラフト十二指腸は緊満し変色、壊死状態であった。膵に関しては癒着が高度で全容は確認できないが、エコーにて膵体尾部の血流は保たれていた。十二指腸は膵頭を温存してY脚を含めて切除したが、膵頭部も血流を認めず壊死していると判断した。膵頭部を追加切除していき血流がみられる部位まで切除した。断面に出現したGDAには血栓を認めた。2mmの主膵管を確認し残存Y脚へblumgart変法で吻合、膵管は外瘻とした。【病理】十二指腸は壊死、出血、膿瘍形成を認めた。膵は線維化、小葉の萎縮、腺房細胞障害や動脈内膜への好中球浸潤がみられ、慢性拒絶としてはmoderate grafr sclerosis, stageⅡに該当した。【術後経過】免疫抑制は3剤(Tac, AZA, steroid)で変更はおこなわず経過をみたが拒絶を疑う所見はなく、C-peptideは基準値以上で推移し、合併症なくインスリンフリーで12PODに退院した。術後5ヶ月経過、耐糖能、腎機能ともに問題はみられていない。【結語】膵移植後の晩期腸管合併症に対して、グラフト膵頭十二指腸切除によりグラフトロスを回避できた。

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