O-011 脳死・心停止ドナー提供膵の有効活用のための膵臓,膵島提供W承諾の有用性
◎加藤 櫻子1
明石 優美1,2
吉川 充史1
剣持 敬1,3
藤田医科大学病院移植医療支援室1
藤田医科大学保健衛生学部看護学科 2
藤田医科大学医学部移植・再生医学 3
脳死・心停止ドナーからは臓器としての膵臓提供,組織としての膵島提供が可能である.糖尿病や耐糖能異常では,ともに適応とならない.しかし肥満(BMI≧25-30),高齢(≧60-65)などでは,膵臓移植の適応は厳しいが,膵島移植には提供可能である場合がある.しかし,膵臓提供の斡旋の後,提供が断念された場合,その後の膵島提供への斡旋は時間的に余裕がなく,ドナー膵が提供されない例が経験された.そこで,日本膵・膵島移植学会とJOTで協議し,膵臓MCが,膵臓は斡旋するが,諸条件で膵臓提供が難しい場合,ドナーご家族に許可を得て,膵臓提供と膵島提供を同時に説明し承諾を得る「W承諾」システムを構築した.今回,W承諾により膵島移植に至った症例を振り返り,その有効性と課題について考察する.
【症例】現在までにW承諾により4例の膵島移植が実施された.いずれも,下位候補まで膵臓移植に斡旋されたが,ドナー条件で提供が断念された例で,いずれも膵島収量は良好で膵島移植に至っている.4症例ともにW承諾でなければ,膵島提供は難しいタイムスケジュールであった.
【考察】W承諾は,膵臓,膵島両方の承諾をとることで,ドナーの意思である膵臓の提供を実現するシステムといえる. W承諾により膵島移植が実施されており,有効なシステムである.しかし,膵臓提供がされた場合,ドナーご家族への膵島提供の説明と承諾書作成は結果的に負担となるため,膵臓提供が極めて難しいと膵臓MCにより判断される場合のみに行う必要がある.今後,他の組織提供を含んだ,臓器・組織の一括コーディネーションが実現されれば,ご家族への負担軽減は明らかである.W承諾のシステムも一括コーディネーションに組み入れることにより,脳死・心停止ドナー提供膵の有効活用が可能で,ドナーの膵臓の提供意思尊重と膵島移植実施が可能となる.