O-031 移植後膵島生着促進における羊膜由来幹細胞の効果について

◎岡田 薫1  戸子台 和哲1  星合 哲郎2  齋藤 昌利3  海野 倫明1  三木 敏生4  亀井 尚1  後藤 昌史5
東北大学大学院医学系研究科消化器外科学分野1 東北大学大学院医学系研究科産婦人科 2 東北大学病院周産期母子医療センター 3 日本大学医学部生体機能医学系生理学分野 4 東北大学大学院医学系研究科移植再生医学分野 5

【背景】膵島移植は1型糖尿病に対する低侵襲かつ有効性の高い治療法として普及が期待されているが、膵島量や移植後早期膵島障害といった問題から、インスリン離脱には複数回の移植を要する症例も多く、膵島生着率の向上が喫緊の課題と言える。我々はヒト羊膜由来幹細胞の1つであるヒト羊膜上皮細胞(hAEC)と膵島との共移植を通して膵島生着率の向上を目指し研究を進めており、これまでに得られた結果を報告する。【方法】Lewisラットへ移植7-8日前にStreptozotocinを経静脈的に投与し、糖尿病を誘導した。移植前日にWister-STラットより分離した4,000 IEQsの同種異系膵島を単独(単独群:n=11)、あるいはhAECs 1x106個と混和し(共移植群:n=11)、経門脈的に移植を行った。移植後、随時血糖および体重の推移を28日間評価した。【結果】共移植群においては、移植後の血糖正常化期間が単独群と比較して有意に延長した(p=0.015)。また、移植後1週間の血糖値も有意に低いことが示された(p=0.045)。しかし、共移植群においても血糖値は徐々に再上昇し、長期にわたる膵島生着糖尿病治癒は確認できなかった。【考察】ラット膵島とhAECを共移植する同種異系膵島移植モデルにおいて、糖尿病の治癒を得ることはできなかった。これはhAECとの共移植のみでは同種免疫拒絶反応の完全な制御が困難であることを示す結果であると考えられる。この移植モデルでは自然免疫反応の制御効果を評価することは困難であるため、今後は短期生着が向上した機序の解明とともに、同種同系共移植モデルにおけるhAECの有効性に関する評価も実施予定である。【結語】hAECと膵島の共移植は、早期膵島障害制御に一定の効果を有することが示唆された。今後、同種同系共移植モデルとの対比を通して、hAECが自然免疫および獲得免疫に与える影響を詳細に検証していく。

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