O-017 保険診療下で膵島移植を施行した腎移植後膵島移植患者の一例

◎藤倉 純二1  穴澤 貴行2  松山 陽子3  井山 なおみ3  境内 大和1  中村 聡宏1  伊藤 遼1  波多野 悦郎2  稲垣 暢也1
京都大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・栄養内科1 京都大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科 2 京都大学医学部附属病院看護部 3

 膵島移植はドナー膵から分離した膵島を糖尿病レシピエントの門脈内へ輸注する低侵襲な組織移植であり、インスリン分泌の枯渇した糖尿病患者において血糖値の安定化や重症低血糖の消失が期待されている。 本邦では2012年~2019年にかけて膵島移植の多施設臨床試験(CIT-J003)が先進医療として行われた。「初回移植後1年のHbA1c<7.4%かつ重症低血糖消失」が、75%の症例で認められたため有効中止となり、2020年には膵島移植の保険収載に至った。 当院では、先進医療において5名の1型糖尿病患者へ計12回の膵島移植を施行した。今回、保険診療により3回の膵島移植を施行した症例を経験した。
 症例は68歳女性。11歳時に1型糖尿病を発症。30歳時にインスリン頻回注射療法(MDI)から持続皮下インスリン注入療法(CSII)へ変更するも血糖コントロール困難でありMDIへ復帰した。その後末期腎不全に至り65歳時に先行的腎移植を受けた。HbA1c8%前後のコントロールで低血糖が月10回程度生じており、保険適用となった膵島移植を希望し待機していた。
 67歳時に初回、その8ヵ月後と10ヵ月後の計3回の膵島移植を受け、移植後14ヵ月が経過している。移植後にSAP(Sensor Augmented Pump)療法も開始しHbA1cは6%弱、TIR (Time in Range)は90%程度を維持し、重症低血糖は生じていない。
 コントロール困難な1型糖尿病患者に、保険診療プロトコールによる膵島移植及びSAP療法との併用は有効と考えられたので報告する。

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