O-007 膵臓移植bench surgeryでのエネルギーデバイス使用に関する安全性評価

◎加来 啓三1  岡部 安博1  久保 進祐1  佐藤 優1  目井 孝典1  野口 浩司1  中村 雅史1
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科1

【目的】膵臓移植において、bench surgeryにおけるcold phaseでの膵グラフト周囲の脈管の正確な同定と処理は容易ではない。結紮に頼るtime-consumingな方法は虚血時間の延長に繋がり、グラフト予後にも影響する。血管の不十分な処理は再灌流後の出血にも繋がる。エネルギーデバイスによる処理が解決の一案であるが、bench surgery特有の冷温、湿潤環境下でのエネルギーデバイス使用の安全性評価はなされていない。
【方法】ブタ臓器・組織を用い、bench surgery環境下でのエネルギーデバイス使用の安全性をex vivoで評価した。4℃に設定したUW液にブタ臓器・組織を浸した状態をbench surgery (BS)状態とし、Dry状態と比較した。エネルギーデバイスはLigaSure (LS)とHarmonic Shears (HS)を使用した。評価項目は両デバイス使用時の側方熱拡散による温度上昇と経時的変化、発生するサージカルスモーク、血管耐圧能、デバイス作動時間とした。
【結果】側方熱拡散ならびにサージカルスモークの評価にはブタ腸間膜を使用した。デバイス1mm距離での側方熱拡散による温度は、LS、HSともにDry状態で有意に高かった(P= 0.02)。BS状態での側方熱拡散による最高温度はLSによるデバイス1mm距離での始動開始5秒後の60.4℃であった。BS状態、Dry状態ともにデバイス5mm距離ではLS, HSともに全試技で35℃以下であった。サージカルスモークはLS、HSともにDry状態に比べBS状態でより多く発生した。デバイスのJawの状態で見ると、full biteに比べhalf biteでより多く発生した。ブタ頸動静脈で評価した血管耐圧能は、LS、HS(Advanced hemostasis mode)ともほぼ全試技で動静脈とも750mmHg以上の耐圧能を示した。シーリング、切離までのデバイス作動時間はLS、HSともにDry状態に比べBS状態で延長する傾向にあった。
【結論】膵臓移植bench surgeryにおいてもエネルギーデバイスは安全に使用可能であるが、生体内とは異なる動作を示す点を理解する必要がある。

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