O-013 臓器提供施設での3次評価、開腹所見で移植辞退した膵臓移植4症例の検討

◎加来 啓三1  岡部 安博1  久保 進祐1  佐藤 優1  目井 孝典1  野口 浩司1  中村 雅史1
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科1

日本臓器移植ネットワークからの情報をもとにドナー、レシピエントともに移植適応ありと判断し臓器提供施設に向かうも、現地で移植辞退した膵臓移植4症例を提示する。
辞退4症例の理由内訳は、ドナー悪性腫瘍1例、3次評価の腹部超音波検査での門脈血栓1例、ドナー開腹所見における膵の著明な萎縮1例、硬化1例である。
1. 50代女性にSPK予定であった。事前に卵巣腫瘍の指摘とCA125 200U/mlと高値の情報あり。術中迅速病理診断で卵巣癌の診断であり移植辞退。全臓器辞退。
2. 30代女性にSPK予定であった。ドナーは50代男性。死因は脳血管障害で、心肺停止時間はなし。BMI 16.5kg/m2. 事前に心エコーでIVC内血栓を指摘されていた。3次評価で行った腹部超音波検査で門脈血栓を広範囲に認め、グラフト血栓リスクから移植辞退。肝臓も辞退。
3. 40代女性にSPK予定であった。ドナーは30代男性、死因は頭部外傷。BMI 29.8kg/m2, HbA1c 5.0%、飲酒歴 Alc.9% 酎ハイ700ml/日、内服歴なし。膵疾患の既往なし。US, CTでは所見なし。開腹所見で膵の著明な萎縮を認め移植辞退。肝臓も辞退。
4. 50代男性にSPK予定であった。ドナーは40代女性、死因は低酸素脳症。BMI 17.9kg/m2, HbA1c 5.6%、飲酒歴なし、双極性感情障害で内服加療歴あり。膵疾患の既往なし。US, CTでは所見なし。開腹所見で膵表面の凹凸不整、著明な硬化を認め移植辞退。他臓器問題なく膵臓のみ辞退。一部膵グラフト組織の提供許可を得てHE染色プレパラートを作成し、後日当院で病理診断を行ったところ、線維化、炎症細胞浸潤とも認めなかった。
悪性腫瘍例を除き、上記門脈血栓や膵の開腹所見での移植適応判断に関しては、その妥当性を評価する機会がこれまでなかった。今回、症例4において、ドナー膵組織の病理診断を後日実施することで、判断の妥当性評価を行うことができた。現地辞退症例のフィードバックは今後の適応判断の場において有益な情報となりうる。

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