O-034 膵臓移植患者における循環血中遊離DNAを用いた膵β細胞傷害評価の試み

◎岡田 朝美1  宮下 和幸2  江口 英利3  山田 美鈴4  森 博康4  松久 宗英4  黒田 暁生4
徳島大学病院小児科1 大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学 2 大阪大学大学院医学系研究科消化器外科 3 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 4

【背景】我々は循環血中遊離DNAから膵β細胞インスリン遺伝子(INS)の特異的なCpG非メチル化をPCRで測定し、streptozotocin投与マウス及び1型糖尿病患者において膵β細胞傷害の定量評価を可能とした(Okada A et al. J Diabetes Investig. 2022;13:1140-1148.)。【目的】膵移植患者において、同様の方法で移植膵グラフトの膵β細胞傷害を定量評価する。【方法】大阪大学医学部附属病院で膵移植を受けた1型糖尿病症例を対象に、移植前、移植直後、移植後24時間、7日目、30日目に血清検体を採取した。血清より遊離DNAを単離し、bisulfite処理を行い、INS を非特異的に増幅するnested PCRを行った後に、PCR産物に含まれるそれぞれ2か所のCpG配列を特異的に増幅するAmplification Refractory Mutant System(ARMS)プライマーを用いたPCRを2種類連続して行い、ターゲットとする4か所のCpG配列が非メチル化状態である膵β細胞由来INS のみを増幅した。得られたCq値より、膵β細胞由来INS コピー数を算出した。
【結果】膵腎同時移植患者8例において、全例でインスリン離脱が達成され、明らかな膵グラフトの急性障害は認めなかった。2例において移植直後及び移植翌日に一過性の膵β細胞由来INS を検出した。そのコピー数は、2〜3コピー/mLであった。膵β細胞由来INS 陽性例において、陰性例と比較してドナーやレシピエントに関連する背景因子および膵グラフト機能に差はなかった。
【結語】経過良好な膵移植症例8例中2例に、移植後早期に一過性の膵β細胞由来INS を検出でき、移植膵グラフト傷害の新しい評価法になり得ることが示唆された。

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