O-028 新規皮下膵島移植法―生体吸収性デバイスによる血管床誘導の有用性

◎江本 憲央1  穴澤 貴行1  出羽 彩1  蘇 航1  藤本 七恵1  井ノ口 健太1,2  山根 佳1,3  多田 誠一郎1,4  波多野 悦朗1
京都大学大学院医学研究科肝胆膵・移植外科1 浜松ろうさい病院 2 島根県立中央病院 3 静岡市立静岡病院 4


【目的】 近年ドナー不足の解消の切り札として、ES/iPS細胞由来の膵島類似細胞が注目されているが、従来の経門脈移植法への適応は難しく、皮下膵島移植法の開発が進められている。皮下は血流と細胞接着の足場が欠如しており、移植細胞の生着率や機能が制限されることが、皮下移植法の欠点とされている。生体吸収性デバイスとbFGFを用いた、移植膵島に血流と足場を提供する皮下膵島移植法が、これらの欠点克服に寄与するか否かについて検討した。
【方法】C57BL/6マウスを用いたsyngeneic transplantationの実験系を用いた。薬剤誘導糖尿病マウスの皮下にbFGF16μg/cm2を担持させたコラーゲンとゼラチンを主成分とした生体吸収性デバイスを14日間留置し、膵島を200個移植し成績を検討した。比較対象として、移植部位非形成マウスを用いた皮下移植、経門脈移植、非吸収性デバイスとしてアガロースを用いた皮下移植を施行した。
【結果】生体吸収性デバイスを用いた移植法は、非吸収性デバイスと比較して、デバイス除去が不要であり、より簡便な手技で移植可能であった。移植部位非形成皮下移植では血糖低下は認めなかった。移植部位形成群(n=16)では移植後30日での血糖正常化率50%、100日目で94%であり、血糖正常化までの平均値は33日(15-73日)であった。生着群でグラフト除去を行うと血糖値再上昇を認め、組織標本にて膵島生着を確認できた。血糖正常化率は経門脈移植群、非吸収性デバイス群と比較して遜色なかった。
【結語】皮下膵島移植において、吸収性デバイスが有用である可能性が示唆された。

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