皮下膵島移植における制御性T細胞療法の治療効果の検討

◎出羽 彩1  穴澤 貴行1  蘇 航1  藤本 七恵1,3  江本 憲央1  井ノ口 健太2  山根 佳3  多田 誠一郎4  波多野 悦朗1
京都大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科1 浜松ろうさい病院消化器外科 2 島根県立中央病院消化器外科 3 静岡市立静岡病院消化器外科 4

目的:過剰な免疫応答を抑制し、免疫自己寛容・免疫恒常性の維持を可能にする制御性T細胞(Treg)は、移植医療への応用が期待されている。Tregは、免疫制御の他、組織特異的に組織修復や再生を促進する可能性があることが示唆されている。近年実用化が模索される皮下膵島移植では移植前血管誘導が有効であるが、誘導時に惹起される組織破壊や炎症の膵島グラフトへの悪影響が懸念される。Treg投与が移植前血管誘導法による皮下膵島移植に及ぼす影響につき検討を行った。
方法: 免疫拒絶の起きない系での検討とし、C57 BL/6Nマウスより分離した膵島細胞500個を、C57/BL6N マウスの背側皮下に移植するモデルを採用した。STZ誘導糖尿病化マウスをレシピエントとし、移植2週間前に皮下にb-FGF(50μg)を担持させたagarose rodsを埋込み血管誘導を行った。C57 BL/6Nマウスの脾臓細胞より分離した内在性Treg(nTreg)1.0×10^6個/匹を、移植時に尾静脈より全身投与した。nTreg投与群と非投与群における皮下膵島移植成績の比較ならびに検討を行った。
結果: nTreg投与群では、非投与群と比較して良好な血糖正常化率(80% vs 63.6%)とレシピエント生存率(100% vs 72.7%)が認められた。移植後血糖正常化までに要する日数の中央値は非投与群より短縮されていた。nTreg投与が及ぼす皮下の移植環境の違いが成績の違いの要因であることが示唆された。
結論:移植前血管誘導法による皮下膵島移植において、nTreg投与は移植環境に好影響を及ぼし、良好な膵島生着が得られる可能性が示唆された。皮下膵島移植におけるTregの作用を解析することで、皮下への膵島生着条件の最適化の検討やTreg療法の応用可能性の検討が可能となると思われた。


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